ステーブルコインは、決済や送金の分野で現実的な選択肢になりつつあります。
一方で、税務・会計の世界では、その位置づけがまだ十分に整理されているとは言えません。
暗号資産とは異なる性格を持ちながらも、完全に「現金」と同じ扱いができるわけでもない。
この中途半端な立ち位置が、実務上の迷いを生んでいます。
本稿では、現時点で未整理、あるいは今後整理が必要となる税務・会計上の論点を整理します。
論点① 会計上の位置づけは「現金」か「その他資産」か
まず最大の論点は、貸借対照表上での区分です。
ステーブルコインは法定通貨と連動し、価格変動がほぼありません。
しかし、
- 紙幣・硬貨ではない
- 銀行預金でもない
という点から、現行の会計基準上は「現金及び預金」にそのまま含めることは難しいと考えられます。
現実的には、
- 流動資産
- その他流動資産
- デジタル決済資産(内部管理上の補助科目)
といった整理が当面の実務対応になる可能性があります。
論点② 決済時に「為替差損益」は発生するのか
円建てステーブルコインであれば、理論上は為替差損益は生じません。
しかし、
- ドル建てステーブルコイン
- ユーロ建てステーブルコイン
を保有・決済に利用する場合は、話が変わります。
この場合、
- 決済時点
- 評価時点
のレート差によって、為替差損益を認識すべきかどうかが問題になります。
現行の外貨建取引の考え方を準用するのか、
暗号資産とは切り分けるのか、
税務上の明確な指針はまだ示されていません。
論点③ 消費税の取扱いはどうなるのか
ステーブルコインそのものの移転は、原則として「支払手段の移動」にすぎません。
そのため、
- ステーブルコイン自体の譲渡
- ステーブルコインによる支払い
は、消費税の課税対象とはなりません。
ただし、
- 何を対価として支払ったのか
- 取引の実体は何か
によって、課税関係は決まります。
実務上は、
「支払方法がステーブルコインであっても、取引内容に応じて通常どおり消費税判定を行う」
という原則を再確認する必要があります。
論点④ 評価替えは必要か
ステーブルコインは価格安定を目的としていますが、
- 発行体リスク
- 裏付資産リスク
- 流動性リスク
がゼロではありません。
このため、期末時点での評価について、
- 帳簿価額のまま据え置くのか
- 一定の評価減を検討すべきか
といった論点が将来的に浮上する可能性があります。
現時点では明確な評価基準はなく、
重要性の原則や実態に即した判断が求められます。
論点⑤ 税務調査で想定される視点
税務調査の観点から見ると、ステーブルコインは次の点が注目されやすいと考えられます。
- 取引の実態が不透明になっていないか
- 資金移動の記録が十分に残っているか
- 仮装・隠ぺいに使われていないか
特に、
- 海外との資金移動
- グループ内取引
では、説明可能な証跡管理が重要になります。
ステーブルコインだから特別というより、
「新しい手段だからこそ、より丁寧な説明が求められる」
という位置づけです。
論点⑥ 暗号資産課税との線引き
現行制度では、暗号資産は
- 原則として雑所得
- 時価評価
といった扱いを受けています。
ステーブルコインがこれと同一視されるのか、
それとも「決済手段」として別枠整理されるのかは、
今後の制度設計次第です。
ここが整理されない限り、
個人利用が広がるほど税務の混乱が生じる可能性があります。
結論
ステーブルコインは、技術的には安定した決済手段であっても、
税務・会計の世界ではまだ「発展途上の存在」です。
現時点で重要なのは、
- 無理に既存制度へ当てはめすぎないこと
- 取引実態を丁寧に記録すること
- 将来の制度変更を前提に柔軟な設計を行うこと
です。
今後、法人決済での利用が本格化すれば、
税務・会計ルールの整備は避けて通れません。
ステーブルコインは、
「便利な決済手段」であると同時に、
「制度が追いつくかどうかを試す存在」でもあります。
参考
日本経済新聞
ステーブルコインの制度動向・法人決済に関する解説記事
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
