ステーブルコインが突きつける「通貨主権」という問い──3メガバンク共同発行が意味するもの

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日本でも、いよいよステーブルコインの本格利用が始まりました。
これまで暗号資産は価格変動の大きさから投機色が強い分野と見られがちでしたが、法定通貨と連動するステーブルコインは、決済・送金インフラとしての現実味を帯びています。

特に注目されるのが、3メガバンクによる日本円ステーブルコインの共同発行構想です。
これは単なる新しい決済手段の話にとどまらず、「円の価値」や「通貨主権」に直結するテーマでもあります。

本稿では、ステーブルコインの基本整理から、日本の金融行政が動き出した背景、そして今後の論点を整理します。


ステーブルコインとは何か

ステーブルコインとは、法定通貨や国債などの資産を裏付けとして発行され、価格の安定を目指すデジタル通貨です。

ビットコインなどの暗号資産と異なり、

  • 日本円や米ドルと1対1で交換できる
  • 価格変動が小さい
  • 決済・送金に使いやすい

といった特徴があります。

日本では、2023年施行の改正資金決済法により、銀行や信託会社などが関与する形での発行が認められました。


日本で先行したJPYCの位置づけ

日本で最初に動いたのが、円建てステーブルコイン「JPYC」です。
個人利用を中心に、フリーランスの越境決済などで利用が広がり始めています。

ただし、1回あたりの発行上限が100万円に設定されていることから、

  • クレジットカード
  • QRコード決済

と競合する個人向け決済市場では、急拡大は見込みにくい状況です。

ここから見えてくるのが、ステーブルコインの主戦場は「法人決済」だという点です。


3メガバンク共同発行の意味

こうした流れの中で浮上したのが、
三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行
によるステーブルコインの共同発行構想です。

金融庁は、規格の異なるステーブルコインが乱立する事態を避けるため、単独発行ではなく「共同発行」を後押ししました。

この構想では、

  • 三菱UFJ信託銀行が受託者として発行
  • 企業グループ内の資金移動・決済に活用
  • 送金コスト・事務負担の削減

といった効果が期待されています。

これは「新しい決済サービス」ではなく、企業金融インフラの再設計に近い動きと言えます。


背景にある「ドル覇権」と通貨主権

世界のステーブルコイン市場を見ると、その約9割がドル建てです。
米国は、ステーブルコインをドル覇権を維持する戦略ツールとして明確に位置づけています。

実際、米国ではステーブルコイン規制法が整備され、

  • 米国債を裏付けとするステーブルコイン
  • 小売決済への本格展開

が視野に入っています。

この状況で、日本が円建てステーブルコインを持たなければ、

  • 日本国内の決済がドル建てで行われる
  • 日本国債ではなく米国債への資金流入が進む

といった事態も現実味を帯びます。

金融庁が「通貨主権の維持」を強調する理由は、ここにあります。


円建てステーブルコインがもたらす波及効果

ステーブルコインは、発行された資金を短期国債などで運用します。
円建てステーブルコインが普及すれば、

  • 裏付け資産としての日本国債需要が高まる
  • 円の国際的な存在感を一定程度維持できる

という側面も出てきます。

つまり、これは
「決済の話」であると同時に、「国債・通貨価値の話」でもあるのです。


結論

ステーブルコインは、もはや一部の技術者や投資家の話題ではありません。
法人決済、国際送金、通貨主権、国債需要といった、金融システムの中核に関わるテーマです。

3メガバンクによる共同発行は、

  • 民間主導
  • しかし国家戦略とも重なる

極めて日本的なアプローチと言えるでしょう。

今後、円建てステーブルコインが「使われるインフラ」として定着するかどうかは、
技術よりも「制度設計」と「実務への落とし込み」にかかっています。

静かに鳴った号砲の先に、日本の通貨と金融のあり方が問われています。


参考

日本経済新聞
号砲 ステーブルコイン(上)3メガ銀、ドル覇権に一石
ステーブルコイン市場・金融行政に関する解説記事


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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