総務省の調査によれば、65歳以上の就業者は930万人。これは21年連続の増加で、今や働く人の7人に1人が高齢者という時代になりました。
「なぜそこまでして働き続けるのか?」と疑問を持つ人もいるかもしれません。
確かに、年金制度や生活費の不足といった経済的な要因は大きな背景です。しかし、それだけではありません。
ここでは、「働き続けなければならない」理由を整理しながらも、その中にある「前向きな意味」に光を当てたいと思います。
経済的理由 ― 生活を守るために
まず否応なく直面するのはお金の問題です。
- 年金の水準は現役時代の収入に比べて大きく下がる。
- 医療・介護などの将来的な支出は増加傾向。
- 物価上昇が進み、生活費への圧迫感が強まる。
こうした現実から、働くことで収入を補う必要がある高齢者は少なくありません。特に非正規雇用として週数日働く形は、「生活費の足し」「年金の補完」として広く選ばれています。
健康と生きがい ― 働くことが心身を支える
しかし働くことの意味は、それだけにとどまりません。
- 生活リズムの維持
毎日同じ時間に起き、職場へ向かう。その規則正しい習慣が、心身の健康を支えます。 - 社会的つながりの確保
職場仲間や顧客との会話は、孤立を防ぐ重要な要素。単身高齢者の増加が課題となる中、働くことは人間関係の維持にも役立ちます。 - 生きがい・自己実現
長年培った知識や経験を生かし、社会に貢献することは大きな喜び。単なる「収入源」ではなく、「社会の一員である実感」につながります。
社会的背景 ― 高齢者に期待される役割
少子化で働き手が不足するなか、高齢者の存在は欠かせません。
- 企業は人手不足解消のためにシニア雇用を積極的に進める。
- 小売業やサービス業など、人材需要の大きい分野で活躍が広がる。
- 知識や経験を活かした教育・指導役としての期待も。
つまり「高齢者が働く」のは本人のためだけではなく、社会の持続性を支える重要な柱でもあるのです。
前向きに働き続けることの意味
「働き続けなければならない」という言葉には、どこか後ろ向きな響きがあります。
しかし視点を変えれば、「働き続けられる社会」こそが、日本が誇る強みとも言えます。
- 70代になっても元気に働けること自体が健康の証。
- 経験やスキルを後世に伝えられることは社会の財産。
- 働くことで自分自身が輝き、人生の後半戦を豊かにできる。
人生100年時代、働くことは単なる「義務」ではなく「選択肢」であり、そして「生き方」そのものになりつつあります。
税理士・FPの視点から
お金の観点でも、働き続けることにはメリットがあります。
- 年金受給開始を繰り下げれば、将来の受給額は増える。
- 就労収入があることで資産の取り崩しを抑えられ、長期的な生活設計が安定する。
- 働きながら社会保険に加入し続けることで、公的保障を厚くできる場合もある。
つまり、「働く=収入」だけでなく、「将来の安心」をつくる行為でもあるのです。
まとめ
高齢者が働き続ける理由は、経済的必要性だけではなく、健康・つながり・生きがい・社会的役割と多岐にわたります。
「なぜ働き続けなければならないのか」という問いは、実は「なぜ働き続けることが大切なのか」に通じています。
そして、それは個人のためであると同時に、社会全体の持続可能性のためでもあります。
前向きに働き続ける姿勢こそが、人生100年時代を豊かに生き抜く最大の鍵になるのではないでしょうか。
📌 参考:日本経済新聞(2025年9月15日朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
