ゴルフ会員権に忍び寄る構造変化 年会費引き上げが示す「会員制モデル」の転換点

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国内ゴルフ場で、年会費の引き上げが一気に広がっています。2026年に年会費を引き上げるゴルフ場は過去最多となり、会員権相場は下落基調に入りました。
一見すると、単なる物価高や人件費上昇への対応のように見えますが、その背景にはゴルフ場経営モデルそのものの転換が見え隠れします。本稿では、年会費引き上げの意味と、ゴルフ会員権の将来像を整理します。

年会費引き上げが「過去最多」となった理由

2026年に年会費を引き上げるゴルフ場は200カ所を超え、前年の2倍以上に達しました。値上げ幅も小幅な調整ではなく、年会費を倍増させる例も見られます。
最大の要因は、施設維持費や人件費の上昇です。グリーン整備、設備更新、キャディーやスタッフの賃金上昇など、運営コストは確実に増えています。ゴルフ場は広大な土地と人手を必要とするため、物価高の影響を直接受けやすい業態です。

コロナ後に変わった「会員とビジターの関係」

もう一つの要因が、会員構成の変化です。コロナ禍以降、ゴルフは屋外スポーツとして再評価され、入会者が増えました。その結果、メンバー比率が高まり、予約の取りづらさや平日の稼働率低下といった新たな課題が生じています。
年会費の引き上げは、単なるコスト転嫁ではなく、「実際に利用する会員を選別する」効果を狙った側面もあります。利用頻度の低いスリーピングメンバーを減らし、ビジター比率を高めることで、プレー収入を安定させたいという意図です。

会員権価格が下落している意味

年会費引き上げを受け、会員権市場では売りが優勢となり、平均価格は2カ月連続で下落しました。特に下落が目立つのは、比較的低価格帯の会員権です。
会員権はこれまで、「資産性」と「利用権」の両面を持つ存在とされてきました。しかし年会費が上がることで、保有コストが明確に意識されるようになり、資産としての魅力は相対的に低下します。利用頻度が低い人にとっては、保有し続ける合理性が薄れつつあります。

ゴルフ場経営は「会員重視」から「稼働重視」へ

従来の会員制ゴルフ場は、会員数を安定収益の基盤としてきました。しかし現在は、年会費だけに依存せず、平日のビジター集客や価格戦略を柔軟に組み合わせる方向にシフトしています。
これはゴルフ場に限らず、会員制ビジネス全般に共通する動きです。「会員であること」そのものより、「どれだけ利用されるか」「どれだけ回転するか」が重視される時代に入りつつあります。

ゴルファー側に求められる視点の変化

今後、ゴルフ会員権を保有するかどうかは、単なるステータスや将来価値ではなく、「年間どれだけ使うか」という実利の視点で判断する必要があります。
年会費の上昇は、ゴルフ場の持続可能性を高める一方で、会員にとっては固定費負担の増加を意味します。ビジター利用との比較、ライフスタイルの変化、年齢や健康状態も含めて、保有の是非を定期的に見直す局面に来ているといえます。

結論

年会費引き上げの広がりは、ゴルフ場経営が転換期にあることを示しています。会員制モデルは形を変えつつ存続し、会員権は「持つこと」より「使いこなすこと」が問われる時代に入りました。
ゴルフ会員権の下落は一時的な現象ではなく、構造変化の表れと捉えるべきでしょう。

参考

日本経済新聞「ゴルフ場、年会費上げ最多 26年、会員権に下落圧力」(2025年12月16日)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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