2025年は、日本のグロース企業にとってM&Aが一つの転換点となった年でした。
東証グロース市場に上場する企業が関与したM&Aの金額は約7,500億円と過去最高を更新し、前年比では6割以上の増加となっています。
この動きの背景には、単なる景気循環や資金環境の変化だけではなく、東京証券取引所による上場制度改革が大きく影響しています。
本稿では、グロース企業のM&Aがなぜ急増しているのか、その構造と意味を整理します。
グロース企業のM&Aが過去最高となった背景
2025年にグロース企業が買い手または売り手となったM&Aは、金額・件数ともに過去10年で最高水準に達しました。
特に目立つのは、グロース企業が「売り手」となる案件が増えている点です。
上場後も時価総額が伸び悩む企業にとって、上場を続けること自体が目的ではなくなりつつあります。
上場維持に伴うコストやガバナンス対応を考慮すると、より大きな資本の傘下に入ることで、成長戦略を加速させる選択肢が現実的になっています。
「小粒上場」を減らす東証改革の影響
東証は、グロース市場の上場維持基準を段階的に引き上げる方針を示しています。
これまでの「上場10年後に時価総額40億円以上」という基準から、「上場5年後に時価総額100億円以上」へと、ハードルは大きく上がります。
この基準は、売上成長だけでは達成が難しく、利益水準や事業規模の拡大が強く求められます。
結果として、単独成長に限界を感じる企業ほど、M&Aによる規模拡大や事業補完を検討せざるを得ない状況になっています。
非公開化という現実的な選択
近年増えているのが、大企業やプライベートエクイティファンドによるTOBを受け入れ、非公開化するケースです。
非公開化によって、短期的な株価や開示負担から解放され、中長期視点での経営判断が可能になります。
また、ファンドと組むことで、経営ノウハウや追加資金を得ながら、次の成長ステージを目指す企業も増えています。
グロース市場は「最終到達点」ではなく、「成長の途中段階」という位置づけが、より明確になってきたといえます。
買い手としてのグロース企業も存在感
一方で、グロース企業自身が大型の買収に踏み切るケースも見られます。
事業基盤が固まり、資金調達力が高まった企業にとっては、M&Aは一気に市場シェアを拡大する有効な手段です。
このような事例は、グロース市場が単なる小規模企業の集まりではなく、次世代の中核企業を育成する場として機能し始めていることを示しています。
未上場企業にも広がるM&Aの波
M&Aの活発化は、上場企業に限った話ではありません。
後継者問題や成長戦略の一環として、未上場企業の間でもM&Aを前向きに検討する動きが広がっています。
特に中小企業では、「売却=撤退」ではなく、「事業を次につなぐ手段」としてのM&Aが受け入れられつつあります。
結論
グロース企業のM&A急増は、一時的なブームではなく、制度改革がもたらした構造的な変化といえます。
上場を維持するためのハードルが上がるなかで、
・単独成長を目指す
・M&Aで規模を拡大する
・非公開化して次の成長を狙う
という複数の選択肢が、より現実的に比較される時代になりました。
今後は、IPOよりもM&Aの件数・金額が上回る局面も想定されます。
グロース市場は「上場すること」がゴールではなく、「どの成長ルートを選ぶか」を問われる市場へと進化しているといえるでしょう。
参考
・日本経済新聞「グロース企業のM&A最高 昨年、金額6割増 東証改革で規模拡大路線」(2026年1月17日朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
