インボイス制度とフリーランスのリアル(第5回)フリーランスが取るべき戦略――2026年に備えて

税理士
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ここまでの連載で、インボイス制度がフリーランスや小規模事業者に与える影響を見てきました。
制度の目的は「消費税を正しく納めること」ですが、現実には価格転嫁できない、取引先から一方的な条件を押しつけられるなど、多くの課題があります。さらに2026年9月末で激変緩和措置が終われば、負担は一気に増す見込みです。

では、フリーランスや小規模事業者はどう備えればよいのでしょうか?


1. 取引先を見直す勇気を持つ

調査では「価格転嫁を認めない取引先との契約を打ち切り、新しい取引先とつながった」という事例も増えています。
もちろん、簡単に取引先を変えるのは難しいですが、「インボイスを理由に不当に値下げするような相手」 に依存し続けることは、将来的にリスクが大きくなります。

  • 契約条件を見直す
  • 新しい顧客層を開拓する
  • 直契約や複数契約で依存度を下げる

こうした取り組みが、制度への耐性を高める第一歩です。


2. 価格交渉力を高める

フリーランスにとって価格交渉はハードルが高いテーマですが、今後は避けて通れません。
そのためにできる工夫は次のようなものです。

  • 自分のサービスの価値を「見える化」する(実績・成果物・顧客の声を整理)
  • 価格表や契約書に消費税を明記し、あいまいさを残さない
  • 「他社も同じ対応をしている」という情報を集め、交渉材料にする

交渉力を高めることは、単に報酬を上げるだけでなく、自分の働き方を守ることにつながります。


3. 納税シミュレーションを行う

激変緩和措置が切れた後は、実際にどれくらいの納税額になるのかを把握しておくことが重要です。
会計ソフトや税理士に相談し、

  • 売上に対する消費税額
  • 経費で差し引ける仕入税額
  • 最終的な納税額の見込み

を試算してみましょう。数字で確認することで「今の報酬水準でやっていけるのか」「値上げが必要か」を判断できます。


4. 制度改正の動きをチェックする

インボイス制度は導入後も批判や改善要望が続いており、今後の税制改正で見直しが議論される可能性があります。

  • 税理士や専門団体の発信をフォローする
  • 新聞や専門誌の記事を定期的に確認する
  • 自分に関係する改正が出たら早めに対応する

「情報弱者」にならないことも、フリーランスにとっての大切な防衛策です。


5. 仲間とつながる

一人で抱え込まず、同業者やフリーランス団体とつながることも有効です。

  • 他の人がどのように価格転嫁をしているか
  • トラブル時にどのように対応したか
  • 契約書や条件交渉の工夫

こうした生の情報は、実務にすぐ役立ちますし、「自分だけが困っているわけではない」という安心感にもつながります。


まとめ

  • 2026年9月末に激変緩和が終わると、負担は一気に増す
  • フリーランスは「取引先の見直し」「価格交渉力の強化」「納税シミュレーション」「情報収集」「仲間との連携」がカギ
  • 制度を正しく理解しつつ、自分を守る行動を早めに始めることが必要

インボイス制度は避けられない現実ですが、工夫次第でその影響を最小限に抑えることはできます。制度に振り回されるのではなく、主体的に備える姿勢が問われているのです。

次回(まとめ総集編)では、シリーズ全体を振り返り、インボイス制度が突きつける「日本経済と働き方の課題」について整理します。


📖 参考:

  • 日本経済新聞「消費税のリアル(下)インボイス、ブラック事例暴く」(2025年10月2日)

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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