インボイス制度が始まった2023年10月以降、フリーランスや小規模事業者への負担を和らげるために「激変緩和措置」が設けられています。これによって当面の痛みは抑えられているものの、期限が迫る2026年9月以降には再び大きな壁がやってくることになります。今回は、その仕組みと今後の影響を整理してみましょう。
1. 激変緩和措置とは?
インボイス制度の導入により、免税事業者や小規模事業者に急激な負担がのしかからないよう、政府は段階的な措置を設けました。代表的なのは次の2つです。
- 免税事業者から仕入れても8割控除できる仕組み
取引先が免税事業者のままでインボイスを受け取れなくても、仕入れ税額の80%までは控除可能。これにより「免税事業者と取引すると不利になる」という状況をやわらげています。 - 小規模事業者の納税額を2割に抑える仕組み
課税事業者になったばかりのフリーランスや小規模事業者は、売上にかかる消費税額の20%だけを納税すればよい特例。例えば売上に10%の消費税が上乗せされても、納税はそのうち2%で済みます。
2. なぜ必要だったのか?
もし激変緩和措置がなければ…
- 免税事業者は一気に取引を失うリスクが高まる
- 課税事業者に転じたフリーランスは納税額が急増し、手取りが大幅に減少する
こうした“ショック”を避けるために、緩和措置は導入されたのです。
3. 2026年9月に迫る期限
ただし、この仕組みは 時限措置 です。
両方の特例は 2026年9月末まで で終了する予定となっています。
- 免税事業者からの仕入れ → 控除ゼロに近づく
- 小規模事業者の2割納付 → 通常の10割納付へ移行
つまり2026年10月からは、負担が一気に重くなることが想定されます。
4. その後に起こり得ること
- 免税事業者の取引排除が進む可能性
控除が効かなくなれば、取引先は「インボイス発行できない事業者」との取引を避けやすくなります。 - 小規模事業者の実質的な手取り減少
2割納付が終われば、消費税分の全額を納める必要があり、収入の減少は避けられません。 - 業界ごとの二極化
交渉力を持つ専門職は価格転嫁に成功しやすい一方、下請け構造に組み込まれる業種はさらなる不利を受ける恐れがあります。
5. 今から備えるべきこと
2026年9月までにフリーランスが考えておきたいのは次の点です。
- 価格交渉をできるように準備する
- 新しい取引先の開拓を進める
- 会計・納税のシミュレーションをしておく
- 制度改正の動きをウォッチする
「2年後に一気に状況が変わる」という前提で、早めに備えておくことが重要です。
まとめ
- インボイス導入時に設定された激変緩和措置は、当面の負担を和らげる役割を果たしている
- 免税事業者への8割控除、課税事業者の2割納付は2026年9月までの時限措置
- 期限切れ後は取引排除や収入減少などのリスクが高まる
- フリーランスは「交渉力」「取引先の多様化」「納税準備」を今から整える必要がある
次回(第5回)は、こうした状況を踏まえた フリーランスが取るべき戦略 を具体的に考えていきます。
📖 参考:
- 日本経済新聞「消費税のリアル(下)インボイス、ブラック事例暴く」(2025年10月2日)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
