世界的にインフレが続くいま、
「現金だけでは資産が目減りする時代」と言われています。
そんななかで注目されているのが、“実物資産(リアルアセット)”。
金(ゴールド)や銀(シルバー)、不動産など、通貨価値の変動に強い資産です。
この記事では、投資初心者にもわかるように、
インフレ時代における「実物資産の役割」と「理想的なバランス」を整理します。
📈 1. インフレで「現金の価値」は下がる
物価が上がる=モノやサービスの値段が上がる。
つまり、同じ1万円で買える量が減るということです。
例:
・2020年の1万円で買えた食料品が、2025年には1万2000円必要になる。
→ 現金の価値が“実質的に下がっている”。
このときに力を発揮するのが、価格そのものが上がる資産=実物資産です。
🪙 2. 「実物資産」とは何か?
実物資産(Real Assets)とは、
物理的・現実的な価値を持つ資産のこと。
| 種類 | 代表例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 貴金属 | 金・銀・プラチナ | 通貨リスクに強い・価値保存性が高い |
| 不動産 | 土地・マンション | インフレで価格上昇しやすい |
| コモディティ | 原油・穀物など | 世界的な需給で価格が動く |
| その他 | 美術品・ワイン・骨董など | 価値評価に個性あり |
対して、株式や債券などの金融資産(ペーパーアセット)は、
発行者の信用に依存するため、インフレ時には相対的に弱くなります。
🟡 3. 金(ゴールド)の役割:通貨価値の「保険」
金は通貨の価値が下がるほど上がる資産です。
歴史的にも、戦争・不況・通貨危機のたびに買われてきました。
- 通貨の代わりになる「無国籍資産」
- 世界中どこでも換金できる
- 利息はないが、価値を守る力が強い
📊 目安として、資産全体の 5〜10%を金で保有 するのが一般的。
新NISAでは「純金上場信託(1540)」などETFでの分散がしやすくなりました。
⚪️ 4. 銀(シルバー)の役割:成長と実需のかけ橋
銀は「産業金属」としての顔を持ち、太陽光発電・EV(電気自動車)・半導体などに使われます。
そのため、金よりも価格変動が大きい一方、景気回復局面では大きく上がりやすい特徴があります。
💡 銀は“攻めの実物資産”。
金が守りの保険なら、銀は成長への参加券のような存在です。
資産全体の 2〜5%程度を目安 に組み込むのが現実的です。
🏠 5. 不動産の役割:インフレに最も連動する資産
不動産はインフレと連動しやすい代表的な実物資産です。
物価や建築費、人件費が上がると、新築の供給コストも上がるため、
結果として既存の不動産価格も上昇しやすくなります。
ただし、注意すべきは次の点です。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 資産価値が上がりやすい | 固定資産税や維持費がかかる |
| 賃料もインフレとともに上昇 | 流動性が低い(すぐ売れない) |
| レバレッジ(ローン)で拡大可能 | 金利上昇で返済負担増 |
インフレ下では不動産が有利ですが、借金(ローン)の金利上昇リスクを忘れずに。
💹 6. 株式の役割:インフレ対応の「成長エンジン」
「インフレに弱い」と思われがちな株式ですが、
企業が価格転嫁できる場合には強いのが特徴です。
- 物価上昇 → 売上・利益が増える企業も多い
- 配当金もインフレとともに上がる可能性がある
- 一方、金利上昇時には株価の下押し要因になる
特に、エネルギー・インフラ・資源関連株は“実物に近い株式”としてインフレ耐性があります。
⚖️ 7. インフレ時代の「4資産バランスモデル」
| タイプ | 金 | 銀 | 不動産 | 株式 | コメント |
|---|---|---|---|---|---|
| 安定重視型 | 10% | 2% | 40% | 48% | 金で守り、不動産で安定収益 |
| バランス型 | 7% | 3% | 30% | 60% | 実物×成長のハイブリッド型 |
| 積極型 | 5% | 5% | 20% | 70% | 銀と株で成長を取りに行く |
インフレ局面では、「守り(実物)」と「攻め(株)」のバランスがポイント。
どちらかに偏ると、為替や金利の変動で資産が大きく揺れやすくなります。
🧮 8. 実物資産を持つ際の3つの注意点
① 現物の保管リスク
→ 金・銀は盗難や紛失対策として、信頼できる地金商や銀行の保管サービスを活用。
② 換金性の違い
→ 金は即換金できるが、不動産は売却まで時間がかかる。資金繰りを考慮。
③ 税金(譲渡・固定資産税・相続)
→ 実物資産は税務上の扱いが異なるため、FP・税理士に相談しておくと安心。
🌈 9. まとめ:「現金だけが安全」ではない時代に
- インフレ=現金の実質価値が下がる
- 実物資産はその分、価値を保つ“防波堤”になる
- 金は守り、銀は攻め、不動産と株でバランスを取る
📖 一言でまとめるなら――
「現金の安心」よりも、「分散の安心」を選ぶ時代へ。
🪙 参考資料:
出典:日本銀行「物価動向レポート2025」/国税庁「譲渡所得課税の取扱い」
World Gold Council “Gold Demand Trends 2024”
シルバー・インスティチュート “World Silver Survey 2024”
日本経済新聞(2025年10月17日 朝刊「銀最高値、群がる投機資金」より)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

