インフレ時代の不動産が映す「価値の変化」― トキ消費とアリーナが示す新しい成長モデル ―

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日本経済は、長く続いたデフレ局面を抜け、インフレを前提とした構造へと移行しつつあります。賃上げ、株高、金利のある世界。こうした変化は、消費行動だけでなく、不動産の在り方にも大きな影響を及ぼしています。
本稿では、商業施設・オフィス・住宅という不動産の各分野を俯瞰しながら、インフレ時代における価値の変化と、今後の課題について整理します。


インフレ下でも消費が動く理由

物価上昇は一般に個人消費を冷やす要因とされます。しかし実際の現場では、必ずしも消費が萎縮しているわけではありません。
注目すべきは、「何にお金を使うか」という消費者の選別が進んでいる点です。名目賃金の上昇は、人々の心理に変化をもたらし、自分にとって価値があると感じるものには支出を惜しまない行動を後押ししています。

この傾向は、商業施設の年末年始商戦が好調だった事実からも読み取れます。単なる日常消費ではなく、「体験」や「記憶」に結びつく支出が増えている点が特徴です。


「トキ消費」という新しい価値軸

近年、不動産業界で注目されているのが「トキ消費」という考え方です。
これは、モノを所有することよりも、その瞬間・その場でしか得られない体験に価値を見出す消費行動を指します。

アリーナと商業施設を一体で運営するモデルは、その象徴的な例です。スポーツ観戦やライブといった非日常体験が、人の流れを生み、周辺施設の集客や消費を押し上げます。
特に若年層との接点を広げるため、デジタルを活用した会員制度や直接販売の仕組みを整える動きは、今後の不動産活用において重要な視点となります。


オフィスは「行きたくなる場所」へ

オフィス市場も、コロナ禍を経て性質が大きく変わりました。
単なる執務スペースではなく、「顔を合わせて付加価値を生み出す場」としての役割が再定義されています。

その結果、立地や空間設計に優れたオフィスでは空室率が極めて低水準となり、賃料の引き上げも進んでいます。
インフレ環境下では、コスト上昇を理由に賃料を上げるのではなく、「どのような価値を提供しているか」を数値や仕組みで説明することが不可欠になります。消費者物価指数に連動させたインフレ条項の導入は、その一つの表れといえます。


マンション価格上昇の分水嶺

住宅分野では、マンション価格の高騰が続いていますが、すでに歪みも生じ始めています。
建設費の上昇により、郊外や地方では一次取得者の予算と合わず、供給が成立しないケースが出てきました。

一方、都市部のタワーマンションでは、高所得世帯や株式資産を背景にした需要が根強く、価格は高水準を維持しています。ただし、一定の価格帯を超えると需要が細る可能性もあり、今後は「どこまでが持続可能か」という見極めが重要になります。


金利上昇と現場の温度感

金利については、利上げが実施されたものの、住宅ローンの中心である変動金利は依然として低水準にあります。
購入者の間では、将来を見据えて固定金利を組み合わせる動きも見られますが、現時点では販売動向に大きな影響は出ていません。

インフレと金利の関係は、中長期的に不動産市場を左右する要素であり、今後も慎重な観察が必要です。


最大の制約は「建設現場」

今後の不動産成長における最大の課題は、建設費高騰と人手不足です。
職人の減少や業界構造の多重化により、生産性向上が進まず、再開発の遅れや倒産の増加といった問題が顕在化しています。

不動産の価値を支えるのは、最終的には「つくる力」です。サプライチェーンの見直しや生産性向上を通じて、賃金上昇が業界全体に行き渡る仕組みづくりが求められています。


結論

インフレ時代の不動産は、「価格が上がるか下がるか」だけでは語れなくなっています。
重要なのは、どのような価値を提供し、その価値をどう説明できるかです。

トキ消費に象徴される体験価値、行きたくなるオフィス、限界を意識した住宅供給。
不動産は、経済構造の変化を最も正直に映す存在です。これからの不動産市場を読むうえでは、数字の裏にある「人の行動」と「価値観の変化」に目を向けることが欠かせません。


参考

日本経済新聞
インフレ下の不動産 「トキ消費」アリーナ成長


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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