――シリーズ「東京の人口増、その9割が高齢者だった」総まとめ
5回にわたってお届けしてきたシリーズも、いよいよ最終回です。
ここでは全体を振り返り、東京の高齢化が私たちの暮らしにどう関わるのか、そしてこれからどう備えていけばよいのかをまとめてみます。
第1回 なぜ東京に高齢者が集まるのか?
最初に取り上げたのは「東京の人口増加の9割が高齢者」という事実でした。
東京は若者が集まる街というイメージが強いですが、実際には子育て世代が郊外や地方に移り住み、介護が必要になる年齢になると再び都心へ戻るという動きがあるのです。
- 病院や介護施設が多い
- 公共交通が便利で車がなくても生活できる
- 買い物や行政サービスなど生活全般がコンパクトにまとまっている
こうした都市の利便性が、高齢者にとって大きな魅力になっています。
第2回 数字で見る東京の高齢化
次に「数字」で現実を見ました。
- 2020年の高齢化率は22.7%
- 2065年には29.4%、約3人に1人が高齢者に
- 後期高齢者(75歳以上)は2055年に36%増加
- 要介護認定者は2030年度に76万人
- 認知症高齢者は2040年度に57万人
一方で、生産年齢人口(15〜64歳)はほとんど増えていません。
つまり、少ない働き手で多くの高齢者を支える構図が避けられないのです。
第3回 介護人材争奪戦の現実
介護人材不足はすでに深刻です。
- 東京都は2030年度に約4万7000人不足
- 神奈川県も2040年度に約4万3000人不足
こうした現実の中で、各自治体は独自の支援を競い合っています。
- 東京都:介護職員に月最大2万円の居住費支援
- 品川区:月1万円を支給
- 世田谷区・目黒区:独自の家賃補助
一見ありがたい施策ですが、これが自治体間の「奪い合い」を招き、結果として全体の人材不足は解決しないという「共有地の悲劇」に陥る懸念があります。
第4回 外国人労働者の活用と課題
不足を補うために、外国人介護職員の活用が進んでいます。
- EPA(経済連携協定)
- 技能実習制度
- 特定技能制度
これらを通じて、多くの外国人が介護現場を支えています。
しかし現実には、地方で採用された外国人が、待遇や生活の便利さを求めて都市部に流入してしまう傾向があります。
また、言葉や文化の壁も課題です。
介護は「身体的ケア」だけでなく「心の交流」も大切な仕事。
だからこそ、日本語学習支援や地域との交流、住居や生活支援といった「暮らしやすさ」が定着のカギになるのです。
第5回 生活者としてできる備え
最後に、私たち一人ひとりにできる備えを整理しました。
- 健康寿命を延ばす
→ 食生活・運動・検診・社会参加 - 介護保険制度を理解する
→ 40歳から保険料を支払い、65歳から利用可能 - 介護費用を家計に組み込む
→ 自己負担平均500万円とされる介護費用を想定する - 家族で早めに話し合う
→ 誰が中心になるか、施設か在宅か、費用負担をどうするか - 外国人介護職員との共生を意識する
→ 相互理解と寛容さが地域の安心につながる - 地域とのつながりを持つ
→ 地域包括支援センターや自治体の活動に顔を出す
これらは「小さな備え」に見えるかもしれませんが、将来の不安を軽くし、家族の安心につながる行動です。
東京の未来と私たち
東京の人口増加は今も続いています。
しかしその主役は、若者ではなく「高齢者」なのです。
- 高齢者が集まることで医療・介護需要は急増
- 介護人材は不足し、自治体間での争奪戦が激化
- 外国人材の活用は不可避だが、定着には生活支援が必要
こうした大きな流れを「社会の問題」として受け止めるだけでは不十分です。
なぜなら、それは私たち自身の生活に直結するからです。
まとめのメッセージ
東京の高齢化問題は、決して悲観的な未来だけを意味するものではありません。
むしろ「どう備えるか」を早く考えれば、安心して暮らす道は十分に開けます。
- 健康に気を配る
- 制度やお金の仕組みを理解する
- 家族と話し合う
- 地域や社会とつながる
こうした積み重ねが、東京という大都市で安心して老後を迎えるための力になります。
未来は待つものではなく、備えることでつくるもの。
このシリーズが、みなさんがその一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。
📌 参考:
東京一極集中の実相(2) 人口増内訳、高齢者が9割(日本経済新聞、2025年10月1日付)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO91639170Q5A930C2L83000/
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

