ふるさと納税は、もはや年末の恒例行事になりました。
お肉やお米、果物から日用品まで、豪華な返礼品を受け取れる「お得な制度」として活用している人も多いでしょう。
2024年度の寄付総額は1.2兆円を突破。
右肩上がりの人気ぶりですが、その一方で制度の“歪み”も目立つようになっています。
その象徴が、10月から始まる 「ポイント付与の禁止」 です。
楽天などが寄付額に応じてポイント還元していた仕組みを、総務省が「過剰競争」だとして規制に踏み切りました。
楽天はこれを不服とし、行政訴訟まで起こしています。
■ なぜポイントは禁止されたのか?
本来ふるさと納税は「都市部に住んでいても、応援したい地方自治体を選んで寄付する」という仕組みです。
しかし実態は…
- ポイント還元を使い、寄付者を囲い込む“ショッピング合戦”に
- 寄付額の約半分が返礼品や仲介業者の手数料に消える
- 行政サービスに使われるはずの税金が「モノやポイント」に化ける
こうした矛盾が広がっていました。
総務省が「このままでは本来の趣旨から逸脱する」と判断したのが、今回の背景です。
■ 生活者にとっての影響
では、私たち生活者にとってどんな影響があるのでしょうか。
- 控除は変わらない
ふるさと納税の税控除(住民税・所得税の減額)はそのままです。ポイント禁止は、あくまで寄付を受け入れる側(自治体・仲介業者)のルール変更です。 - 駆け込みが増える
「ポイント還元は9月まで」ということで、今年は年末より前に寄付が集中しそうです。返礼品の在庫が逼迫し、人気商品が早めになくなる可能性もあります。 - 地元の税収にはマイナス
例えば東京都では、毎年数千億円規模の住民税がふるさと納税で流出しています。結果として、子育てや福祉など本来受けられる行政サービスが圧迫されるリスクがあります。
「自分は得しているけど、住んでいる地域は損をしている」…
これがふるさと納税の難しい現実です。
■ 制度を整理するなら?
もし制度を整理するなら…制度を次のように二つに分けるという方法もあります。
- 純粋な寄付型(返礼品なし)
震災支援や地域の学校支援のように、「返礼品なしでも応援したい」と考える寄付。控除は住民税中心で。 - 販促型(返礼品あり)
返礼品を楽しみたい寄付は「ふるさと通販」として切り分ける。控除は所得税中心とし、モノを買うのに近い仕組みにする。
こうすれば「寄付」と「お買い物」をきちんと分けられ、今回のようなポイント禁止などの小手先対応に追われる必要もなくなります。
■ 利用者が意識しておきたいこと
生活者として私たちにできることは以下の2つでしょうか…。
- 返礼品だけで選ばない
本当に応援したい地域や、自分にゆかりのある自治体を優先する。 - 地元の行政サービスにも目を向ける
「ふるさと納税で得した分、地元の公共サービスにしわ寄せが出るかもしれない」と頭の片隅に置いておく。
その意識があるだけで、制度との付き合い方は変わってきます。
■ おわりに
ふるさと納税は「税金の使い道を選べる」というユニークな制度です。
ですが、今では、返礼品合戦やポイント競争に翻弄され、本来の姿が見えにくくなっています。
寄付を考える前に、一度立ち止まって「自分はどんな形で地域を応援したいのか」を考えることが必要かもしれません。
ということで、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、引き続きよろしくお願いいたします。

