なぜ事業承継税制は「毎年のように」見直されるのか

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事業承継に関する税制は、ほぼ毎年のように見直しが行われています。特例措置の延長や要件緩和が発表される一方で、事後管理の厳格化や新たな制約が加えられることもあります。
こうした動きを目にすると、「制度が安定していない」「結局、いつ使えばよいのかわからない」と感じる経営者や実務家も少なくありません。しかし、事業承継税制の頻繁な見直しは、場当たり的な対応ではなく、一定の政策的意図に基づいて行われています。

事業承継税制が生まれた背景

事業承継税制は、相続税や贈与税の負担が原因で中小企業の事業継続が困難になることを防ぐ目的で導入されました。
後継者不足や経営者の高齢化が進む中で、税負担を理由とした廃業が地域経済や雇用に与える影響は無視できません。税制を通じて事業の継続を後押しするという考え方自体は、一貫して維持されています。

なぜ「恒久化」と「特例」が繰り返されるのか

事業承継税制をめぐる改正の特徴は、「恒久制度」としつつも、実務上は期限付きの特例措置が重ねられてきた点にあります。
これは、制度の利用を促進したいという政策目的と、将来的な税収や制度濫用への懸念との間で、調整が続いていることの表れです。まずは特例として導入し、利用状況や影響を見ながら見直す。このサイクルが、結果として頻繁な改正につながっています。

政策が見ているのは「税額」ではない

税制改正を見る際、どうしても税負担の増減に目が向きがちです。しかし、政策の視点は必ずしも税額そのものに置かれているわけではありません。
事業承継税制では、雇用の維持、事業の継続、地域経済への影響といった要素が重視されています。要件の中に雇用や事業継続に関する条件が盛り込まれているのは、そのためです。税制は、企業行動を一定の方向へ誘導するための手段でもあります。

税制改正を見るときの基本姿勢

事業承継税制が毎年のように見直される背景を理解すると、税制改正の見方も変わります。
「今年は使えるか」「去年より有利か」という短期的な視点だけでなく、「国は何を守ろうとしているのか」「どの行動を促そうとしているのか」という構造を見ることが重要です。制度は固定されたルールではなく、政策目的に応じて調整され続けるものだと捉える必要があります。

結論

事業承継税制が頻繁に見直されるのは、制度が不安定だからではありません。中小企業の事業継続と雇用を守るという目的のもとで、常に調整が加えられている結果です。
税制改正を単なる有利・不利の比較として捉えるのではなく、政策の流れを読み解く視点を持つことが、制度に振り回されない事業承継につながります。

参考

・日本経済新聞「M&Aは特別な手段ではない」PwCコンサルティング パートナー 久木田光明(2025年12月16日)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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