令和9年から創設されるこどもNISA。
教育資金準備の新しい制度として注目されていますが、同時に「相続対策として使えるのではないか」という声も聞かれます。
非課税で運用できる制度である以上、資産移転との関係を考えたくなるのは自然なことです。
しかし、結論から言えば、こどもNISAは“直接的な相続税対策”ではありません。
本稿では、その理由と間接的な効果を整理します。
こどもNISAの基本構造
こどもNISAは、
- 年間投資枠60万円
- 非課税保有限度額600万円
- 18歳で通常NISAへ自動移行
という制度です。
ポイントは、「運用益が非課税」であるという点であり、
元本の移転自体が非課税になる制度ではない ということです。
相続税の課税対象になるか
こどもNISA口座にある資産は、子ども名義の財産です。
そのため、
- 親や祖父母が死亡した場合
- その口座資産は相続財産には含まれません
ここだけを見ると、相続対策に見えるかもしれません。
しかし重要なのは、
資金を口座に入れる段階で、すでに贈与が成立しているという点です。
暦年贈与との関係
例えば祖父母が孫のこどもNISA口座に毎年60万円を拠出する場合、
- 年110万円以内であれば暦年贈与の非課税枠内
- それを超えれば贈与税課税
となります。
つまり、
こどもNISAが相続税を減らすのではなく、
暦年贈与が相続財産を減らしている のです。
制度の本質は「運用非課税」であり、「移転非課税」ではありません。
名義預金リスク
さらに注意すべきは、形式だけ子ども名義にしても、
- 実質的に祖父母が管理している
- 自由に引き出せない
場合は、名義預金と判断される可能性がある点です。
贈与の実質がなければ、相続財産に含まれるリスクがあります。
こどもNISAは、正しい贈与設計とセットでなければ意味を持ちません。
間接的な相続対策効果
では、こどもNISAは全く相続対策にならないのでしょうか。
間接的効果はあります。
① 早期資産移転の促進
若年層への資金移転が進めば、
将来の相続財産は自然に縮小します。
② 運用益の非課税化
仮に600万円が1,000万円に増えた場合、
増加分400万円には所得税が課されません。
その結果、子世代の資産形成が進み、
親世代の援助負担が減る効果があります。
相続対策としては限界がある理由
相続税対策として見ると、
- 年間枠60万円
- 非課税保有限度600万円
は規模として限定的です。
相続財産が数億円規模の場合、
効果は限定的といえます。
また、18歳以降は通常NISAに移行し、
相続時評価は時価で行われます。
評価圧縮効果もありません。
誤解しやすいポイント
こどもNISAは、
- 相続税非課税制度
- 相続時精算課税制度
とは全く別物です。
「非課税」という言葉が誤解を生みやすいですが、
非課税なのは運用益であって、相続税ではありません。
どの家庭に向いているか
相続税対策として積極的に使うというより、
- 教育資金準備
- 早期資産移転
- 長期投資教育
の文脈で活用する制度です。
結果として、
- 相続財産が減少する
- 子世代の自立が進む
という副次的効果が生まれる可能性があります。
結論
こどもNISAは、直接的な相続税対策制度ではありません。
しかし、
- 暦年贈与と組み合わせることで早期移転を促進し
- 運用益を非課税にし
- 次世代の資産形成を後押しする
という意味で、間接的な相続財産圧縮効果はあります。
制度の本質は、
「税を減らす制度」ではなく
「時間を味方にする制度」です。
相続対策として過大評価するのではなく、
世代間資産形成の一部として冷静に位置付けることが重要です。
参考
・税のしるべ 2026年2月9日号
「令和8年度税制改正大綱を読む」第6回(個人所得課税③)
