令和9年から創設されるこどもNISAは、教育資金準備の新たな選択肢となります。
年間60万円、非課税保有限度額600万円という枠組みは、家計設計において無視できない規模です。
しかし、投資は「制度があるから使う」のではなく、「目的に合うかどうか」で判断する必要があります。
本稿では、具体的な数値シミュレーションを通じて、こどもNISAを教育資金設計にどう組み込むかを整理します。
前提条件の設定
まず、共通の前提を置きます。
- 子ども年齢:0歳から積立開始
- 積立期間:18年間
- 年間投資額:60万円(満額利用)
- 想定利回り:年3%(保守的ケース)、年5%(標準ケース)
将来の大学進学費用として、18歳時点の評価額を確認します。
ケース① 年3%で運用した場合
年60万円を18年間積み立て、年3%で複利運用した場合の将来価値は概ね次の水準になります。
- 元本総額:1,080万円
- 運用後評価額:約1,330万円前後
約250万円程度の運用益が非課税で確保できる計算です。
国公立大学4年間の学費相当をほぼカバーできる水準です。
ケース② 年5%で運用した場合
同条件で年5%運用の場合は、
- 元本総額:1,080万円
- 運用後評価額:約1,600万円前後
運用益は約500万円超となります。
私立大学理系や下宿費用を含めたケースでも、相当部分をカバー可能です。
ただし「価格変動リスク」は必ずある
ここで重要なのは、18歳時点で必ず上記の金額になる保証はないという点です。
例えば進学直前に市場が20%下落した場合、
- 1,600万円 → 約1,280万円
まで減少する可能性があります。
教育資金は「使う時期が決まっている」ため、全額を株式型投資に依存する設計は危険です。
ハイブリッド設計という考え方
教育資金設計は、次の3層構造が合理的です。
第1層:安全資金(預貯金)
入学初年度費用や受験費用など、確実に必要な資金。
第2層:こどもNISA(長期投資枠)
時間を味方にしながら増やす部分。
第3層:奨学金・教育ローン
不足分の補完手段。
例えば、
- こどもNISA:月5万円積立(年60万円)
- 預貯金:月2万円積立
- ボーナス時に追加貯蓄
という分散設計が考えられます。
途中引き出しの設計
こどもNISAは12歳以降、子の同意があれば払出し可能です。
ただし、
- 中学受験費用
- 留学費用
- 高校授業料
などに充てる場合、売却タイミングの市場環境に左右されます。
従って、「高校までの資金」と「大学資金」は分けて管理する方が安全です。
教育資金一括贈与終了との関係
教育資金一括贈与の非課税措置は終了します。
これは、
- 一括移転型
- 富裕層中心
という制度から、
- 分散型
- 投資型
- 広範囲対象
への政策転換を意味します。
世代間移転よりも、市場参加を通じた資産形成を後押しする設計です。
どの家庭に向いているか
こどもNISAが向いているのは、
- 18年間継続積立が可能
- 価格変動を受け入れられる
- 教育費を全額依存しない設計ができる
家庭です。
逆に、
- 教育費を確実に確保したい
- 途中で資金が必要になる可能性が高い
場合は、安全資金の比率を高めるべきです。
結論
こどもNISAは、教育資金準備の強力なツールになり得ます。
しかし、それは「万能の制度」ではありません。
教育資金は期限付きの資金であり、投資は価格変動を伴います。
最も重要なのは、
投資額の設定
安全資金とのバランス
売却タイミングの設計
この3点です。
制度を使うことが目的ではなく、子どもの進路を安定的に支えることが目的です。
こどもNISAは、そのための選択肢の一つとして、冷静に位置付ける必要があります。
参考
・税のしるべ 2026年2月9日号
「令和8年度税制改正大綱を読む」第6回(個人所得課税③)
