【AI×確定申告/AI×スモールビジネス支援シリーズ 第7回】AI確定申告時代のリスクとトラブル―「全部AI任せ」は危険?安全に使うための基礎知識―

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AIを活用した確定申告支援は、時間の節約や負担軽減において非常に大きなメリットがあります。レシート撮影で仕分けが済み、売上や経費が自動で取り込まれ、申告書の作成もAIがサポートしてくれる時代になりました。

しかし、便利さと同時に注意すべきなのが「AI任せにしすぎるリスク」です。
AIは入力作業や分類を得意としますが、「判断」「文脈理解」「税務判断の適用」といった領域は苦手で、誤分類・計上漏れ・保存不備などのトラブルも起こり得ます。

本記事では、AI時代の確定申告で起こりやすいリスクとトラブルを具体的にまとめ、一般の利用者が気をつけるべきポイントを解説します。

1.AIは“正確”だが“完璧”ではない

AIは大量のデータを高速処理する点では優れていますが、「税務上の判断」をすべて理解できるわけではありません。

AIがミスを起こす原因には次の特徴があります。


● AIは「文脈」を完全に理解するのが苦手

  • 打ち合わせの飲食 → 会議費なのか交際費なのか
  • 備品購入 → 消耗品費か資産計上か
  • 自宅のネット代 → 事業按分は何%か

これらは「状況判断」が必要であり、AIが誤りやすい部分です。


● AIは“見慣れない取引”に弱い

  • 年に1回しか使わないサービス
  • 初めて利用した店舗
  • 新しい決済サービス

学習データが少ない分、分類ミスが起きやすくなります。


● AIは「税制改正」をすぐに理解できない

税法は毎年のように改正されるため、

  • 控除額
  • 特例条件
  • 償却方法
    などが変わることがあります。

AIが最新の税法に完全対応するには、アップデートのタイムラグが生じることがあります。


2.AI確定申告でよくある5つのトラブル

【トラブル①】費目の誤分類

AIで最も多いミスが「誤仕分け」です。

よくある例

  • 宿泊費を“消耗品費”と読み取る
  • 交際費と会議費の取り違え
  • 通信費と消耗品費の混同
  • スマホ料金をすべて経費扱いにする

費目の誤分類は税務調査でも指摘されやすく、過大な経費計上につながる場合があります。


【トラブル②】計上漏れ・取り込み漏れ

AIに任せきりにすると、

  • レシートの撮影忘れ
  • PDFの取り込み忘れ
  • 電子領収書の保存漏れ
    といった人為的ミスに気づきにくくなります。

AIが自動化してくれる分、“人の確認”の重要性が逆に高まります。


【トラブル③】電子領収書の保存方法が誤っている

電子取引は紙に印刷して保存するだけでは法令違反になり、
税務調査で問題になるリスクがあります。

会計ソフトに取り込ませたとしても、

  • 保存形式が不適切
  • 必要な項目が欠落
    しているケースがあります。

【トラブル④】家事按分の判断ミス

AIは按分比率を理解しません。

例えば、

  • ネット代
  • 電気代
  • スマホ代
  • 家賃
    など、「どれくらい事業で使ったか」という判断はAIに任せられません。

按分を過大にすると、指摘リスクが増します。


【トラブル⑤】AIの読み取りミスに気づかない

AIが読み取った金額が、

  • 9,980円が“998”
  • 2025年1月が“2023年1月”
    というように、数字の誤認識が起きることがあります。

特に日付の誤認は経費計上の年度を誤る原因になり、
修正申告が必要になるケースもあります。


3.AI任せにすると“税務調査リスク”が増える?

AI自体がリスクになるわけではありませんが、
“気づかない誤り”が積み重なると、結果として調査リスクが高まります。

調査でよく指摘される項目と、AIとの関係は以下の通りです。


● ① 過大な経費計上

AIの誤分類を放置した結果、
本来計上できない費用まで経費に入っているケース。

● ② 家事按分の過大計上

AIが自動で按分してくれると誤解し、
すべてを事業経費にしてしまうケース。

● ③ 電子領収書の保存方法の誤り

電子データ保存のルールと異なる方法をとり、
税務署から“要件を満たしていない”と判断されるケース。


4.AI確定申告を安全に使うための5つのポイント

(1)AIが分類した内容を“月に一度”点検する

  • 金額
  • 日付
  • 費目
  • 税区分

この4点を確認するだけで、ミスは大幅に減ります。


(2)家事按分は必ず自分で設定する

AI任せでなく、

  • 業務使用割合
  • 面積割合
  • 利用時間
    など、自分の実態に基づいて設定する必要があります。

(3)電子領収書は“電子のまま”保存する

AIが取り込んでくれるとはいえ、

  • PDF
  • メール
  • WEB明細
    を電子で保存することは必須です。

(4)レシート撮影は“その日のうちに”

まとめて撮影するほど、

  • 撮影漏れ
  • 紛失
  • 日付の混乱
    が起こりやすくなります。

“気づいた時に撮影”がトラブル防止の鍵です。


(5)税制改正のポイントだけは年に一度確認する

AIも更新されますが、

  • 控除の変更
  • 経費の扱い
  • 新制度の施行
    などは自分でも把握しておくと安心できます。

5.「AI×人」で最も強い確定申告体制が作れる

AIの役割は
“作業を自動化すること”
であり、
人の役割は
“判断し、確認すること”
です。

どちらか片方だけを頼りにすると不安が残りますが、
双方をバランスよく使うことで、

  • 効率的
  • 正確
  • 適法
    な確定申告ができるようになります。

特に個人事業主の場合、
AI×人のハイブリッド運用は最も現実的で強力な選択肢です。


結論

AIを活用した確定申告は、これまでの手作業に比べて格段に効率的で、ストレスの少ない方法です。しかし、“全部AI任せ”にしてしまうと、誤分類・計上漏れ・保存不備などのリスクが積み重なり、後から大きな問題となる可能性もあります。

AIは確定申告を強力にサポートしてくれる存在ですが、利用者自身の理解と確認が欠かせません。

AIと人の役割を適切に分担することで、
「正しく・簡単に・安心して」
確定申告を行うことができます。

AIはあくまで“便利な道具”。
使いこなすことで、確定申告の負担を大幅に減らし、より自由な働き方を実現できるでしょう。


参考

・国税庁「確定申告・電子帳簿保存法関連資料」
・日本経済新聞「AIエージェントで確定申告支援」(2025年12月3日)
・AI会計ソフト各社の一般公開情報


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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