住宅価格の上昇が止まりません。
とくに都市部では、新築マンションが1億円を超えるケースも珍しくなく、「これでは子育て世帯が家を持てない」との声が広がっています。
こうした現状を踏まえ、2025年度の税制改正では「住宅ローン控除の子育て世帯等に対する借入限度額の上乗せ」が、2024年度に続いて延長・拡充されることになりました。
🧾 住宅ローン控除とは?
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンの年末残高に一定の割合(原則0.7%)を乗じた額を、所得税や住民税から控除できる制度です。
住宅購入にかかる金利負担を軽減するための仕組みで、ローン返済を続けながらも「実質的に支払いを減らす」効果があります。
👶 子育て世帯・若年夫婦世帯への上乗せ措置
今回の改正のポイントは、「子育て世帯や若年夫婦世帯」が対象となる上乗せ措置の継続です。
子育て世帯等の定義
- 18歳以下の扶養親族がいる世帯
- 本人または配偶者のいずれかが39歳以下の世帯
この条件を満たす場合、省エネ住宅などの一定基準を満たす住宅を取得したとき、住宅ローン控除の借入限度額が上乗せされます。
🔹 借入限度額の比較(改正前後)
| 区分 | 認定住宅 | ZEH水準省エネ住宅 | 省エネ基準適合住宅 |
|---|---|---|---|
| 改正前(一般) | 4,500万円 | 3,500万円 | 3,000万円 |
| 改正後(子育て世帯等) | 5,000万円 | 4,500万円 | 4,000万円 |
| 改正後(それ以外) | 4,500万円 | 3,500万円 | 3,000万円 |
📌つまり、子育て・若年世帯であれば最大5,000万円までのローン残高が控除対象となります。
省エネ住宅への誘導を促す狙いも込められています。
🏡 適用を受けるための主な条件
新築・中古を問わず、以下の条件を満たす必要があります。
- 取得から6カ月以内に本人が居住していること
- 住宅ローンの返済期間が10年以上あること
- 住宅ローン控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下
- 床面積が50㎡以上で、1/2以上が居住用
- ※2025年末までに建築確認を受けた新築住宅で、所得1,000万円以下の場合は40㎡以上でも可
- 居住した年の前後2年ずつと入居年を含む5年以内に、3,000万円特別控除など「居住用財産の譲渡特例」を使っていないこと
中古住宅の場合は、これらに加えて耐震基準への適合が求められます。
📑 確定申告を忘れずに
住宅ローン控除は、初年度に確定申告が必要です。
会社員であっても、初年度だけは税務署に申告し、2年目以降は年末調整で自動反映されます。
また、控除対象となる住宅の「省エネ性能の証明書(認定通知)」や「登記事項証明書」などを添付する必要があるため、書類準備を早めに進めましょう。
💬 FPの視点:控除額アップよりも「総返済額」で考えよう
「借入限度額が上がった=たくさん借りられる」ではありません。
金利上昇局面では、ローンの総返済額が大きく膨らむ可能性があります。
控除で戻る額より、金利負担の方が重くなるケースもあるため、長期固定金利や繰上返済シミュレーションなどを活用して、無理のない資金計画を立てましょう。
🌿 まとめ:子育て支援+省エネ促進の「両輪」
今回の税制改正は、
- 子育て世帯の住宅取得支援
- 省エネ住宅の普及促進
という2つの政策目的を兼ね備えています。
家計にやさしい制度であると同時に、将来のエネルギー負担を軽減する「先行投資」でもあります。
控除の恩恵を最大限に活かすには、住宅の性能・契約時期・申告のタイミングをしっかり確認することが大切です。
📚 出典:
財務省「令和7年度税制改正(2025年3月)」
日本FP協会「トレンド・ウォッチ:子育て世帯等に対する住宅ローン控除の上乗せ措置」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
