【補足シリーズ第1回】「生命保険料・地震保険料控除」最新ルールと注意点

税理士
水色 シンプル イラスト ビジネス 解説 はてなブログアイキャッチのコピー - 1

年末調整の時期になると、多くの人が郵送やメールで受け取るのが「生命保険料控除証明書」。
しかし、いざ申告書を書こうとすると、「どの保険が対象?」「新旧契約の違いって何?」と迷う方も多いのではないでしょうか。

今回は、2025年の年末調整で見落としやすい「生命保険料控除」と「地震保険料控除」の最新ルールと注意点を整理します。


🧾 1. 生命保険料控除とは ― 「払った保険料の一部が税金から戻る」制度

生命保険料控除は、1年間に支払った保険料のうち一定額を所得から差し引ける制度です。
控除額が増えるほど、課税所得が減り、結果的に税金の負担が軽くなる仕組みです。

控除できるのは、次の3つの区分です。

区分対象となる保険控除限度額(所得税)
一般生命保険料控除死亡保険・終身保険など4万円
介護医療保険料控除医療・がん・介護保険など4万円
個人年金保険料控除年金型保険・確定年金など4万円

※住民税の控除上限は一律2.8万円

つまり、3区分すべてを利用すれば、所得税で最大12万円、住民税で最大7万円弱の控除が受けられる計算です。


💡 2. 「新制度」と「旧制度」で上限が違う

実は生命保険料控除は、2012年1月1日を境に「新制度」と「旧制度」に分かれています。

  • 2011年以前に契約した保険 → 旧制度(控除上限5万円)
  • 2012年以降に契約した保険 → 新制度(控除上限4万円)

旧制度の契約は対象が「一般生命保険料」「個人年金保険料」の2区分のみで、
医療・介護保険料の控除はありませんでした。

今でも古い契約を継続している方は、「旧制度」として区別して申告する必要があります。
契約日と区分を間違えると控除額が変わるため、証明書をよく確認しましょう。


🧮 3. 控除額の計算方法をシンプルに理解する

控除額は支払った保険料に応じて段階的に決まります。
たとえば「一般生命保険料控除」の場合、次のように計算されます。

年間支払保険料控除額(所得税)
20,000円以下全額控除
20,001円〜40,000円(支払額×1/2)+10,000円
40,001円〜80,000円(支払額×1/4)+20,000円
80,001円以上一律40,000円

つまり、支払額が8万円を超えると控除は頭打ちになります。
「年に10万円払っているのに控除は4万円」というケースも珍しくありません。


🧾 4. 地震保険料控除も忘れずに

火災保険の付帯契約として加入している地震保険も、年末調整で控除できます。
こちらは比較的シンプルで、支払額に応じて次のように決まります。

年間支払保険料控除額(所得税)
50,000円以下支払額全額
50,000円超一律50,000円

ただし、住宅ローン控除などと併用する場合、対象期間や名義がずれていると認められないこともあります。
「誰が契約し、誰が支払っているか」を一致させるのが原則です。


📬 5. 証明書の提出方法 ― 紙・電子どちらでもOK

最近は、郵送のほかに「電子証明書」形式で受け取れるケースも増えています。
生命保険会社がメールやマイページで発行するPDF形式の証明書も有効です。

年末調整ソフトやマイナポータル連携を使えば、証明書データを自動取得して申告書に反映することも可能です。
紙を提出する場合は、「提出済」「未使用」などの印をつけて整理しておくと混乱を防げます。


⚠️ 6. よくあるミスと対策

ミス例対応策
証明書を紛失した保険会社のコールセンターで再発行可能(1週間前後)
契約者と保険料負担者が違う控除対象は「実際に払っている人」
医療・年金保険を間違えて区分した「証明書に印字された区分」をそのまま記入する
同じ契約を夫婦で二重申告どちらが払っているかを明確にして片方のみ控除

✏️ まとめ ― 「証明書を出すだけ」ではもったいない

生命保険料控除や地震保険料控除は、
「証明書を出せば終わり」ではなく、
自分がどんな保険に加入していて、どこまで税金が軽くなるのかを知る機会でもあります。

契約を見直すきっかけにもなりますし、
家族の保険料をどう分担しているかを考えることで、
より効率的な家計設計にもつながります。


出典:『企業実務』2025年8月号
「年末調整に向けた『基礎控除の見直し等』『特定親族特別控除』の準備実務」および国税庁「令和7年版 年末調整のしかた」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

タイトルとURLをコピーしました