2025年の年末調整は、ここ数年でもっとも制度改正が多い年です。
「103万円の壁」「基礎控除の見直し」「特定親族特別控除」「電子化対応」など、
働く人すべてに関係するルールが変わります。
この記事では、これまでのシリーズ(全8回)を総まとめしながら、
2025年の年末調整で知っておきたいポイントを、家計・企業・制度の3つの視点で整理します。
🧭 1. 今年の改正のキーワードは「壁」と「控除」
2025年の税制改正で最も注目されたのは、
長年の課題だった「103万円の壁」が「160万円の壁」へと引き上げられたことです。
これは、最低賃金の上昇や物価高に対応するため、
「働くほど損をする」構造を是正する目的で実施されました。
🔹 主な変更点
| 改正項目 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 基礎控除 | 一律48万円 → 58万円(+特例加算最大95万円) | 所得の低い人ほど税負担が軽くなる |
| 給与所得控除 | 55万円 → 65万円 | 所得税がかかるラインが160万円に |
| 特定親族特別控除 | 新設(19〜22歳の子の扶養) | 子どもの年収188万円まで段階的に控除 |
| 配偶者控除等 | 所得区分が変更 | 共働き世帯の判定基準も見直し |
💬 ポイント:
「壁の緩和」と「控除の拡充」はセットで進められた改正。
これにより、働く学生・主婦(主夫)・シニア層の就労意欲を支える仕組みになっています。
🏠 2. 「控除」を正しく活かす ― 主要4分野の見直しポイント
年末調整の中心は「控除」です。
しかし、制度が複雑化した今、どの控除を会社で処理し、どれを確定申告で行うのかを理解することが大切です。
🧾 年末調整で処理できる主な控除
- 基礎控除・配偶者控除・扶養控除
- 生命保険料控除・地震保険料控除
- iDeCo(小規模企業共済等掛金控除)
- 住宅ローン控除(2年目以降)
🧮 確定申告が必要な控除
- 住宅ローン控除(初年度)
- 医療費控除
- ふるさと納税(ワンストップ特例を利用しない場合)
💬 控除活用の3原則
- 証明書はすべてそろえる(紙・電子問わず)
- 年内に支払った分しか対象にならない
- 提出漏れは「確定申告」で救済できる
🔍 iDeCoは「小規模企業共済等掛金控除」に分類され、
国民年金基金連合会から届く「払込証明書」を提出すれば年末調整で完結します。
出し忘れると節税効果がゼロになるため要注意です。
🧾 3. 「特定親族特別控除」で変わる大学生扶養の考え方
新しく創設された「特定親族特別控除」は、
大学生など19〜22歳の子どもを扶養している家庭にとって重要な制度です。
これまで「年収103万円を超えると扶養から外れる」仕組みでしたが、
2025年からは年収188万円まで段階的に控除が受けられるようになります。
| 子の年収(給与収入) | 親の控除額(所得税) |
|---|---|
| 〜150万円 | 63万円(満額) |
| 150〜155万円 | 61万円 |
| 155〜160万円 | 51万円 |
| … | … |
| 185〜188万円 | 3万円 |
💬 ポイント:
アルバイトを増やしても、すぐに扶養から外れなくなります。
「働く学生」を支援する新しい仕組みです。
💻 4. 年末調整の電子化 ― マイナポータルで“書かない調整”へ
年末調整の電子化は、2025年のもう一つの大きなトピックです。
国税庁が提供する「年末調整ソフト」や、クラウド給与システムの普及によって、
紙の記入・提出が不要な時代が到来しています。
💡 電子化の主な流れ
- マイナポータルで控除証明書(保険・iDeCo・住宅ローン等)を自動取得
- データを年末調整ソフトに取り込み
- 従業員はスマホで入力・提出
- 経理が電子承認して申告完了
💬 ポイント:
2025年は「紙でも電子でもOK」の過渡期。
今後は完全電子化に移行する見込みです。
🧮 5. 企業・経理担当者の実務チェックリスト
| 項目 | 内容 | 対応時期 |
|---|---|---|
| 改正内容の社内周知 | 基礎控除・特定親族特別控除など | 7〜9月 |
| 新様式の配布・説明 | 改訂申告書を従業員へ配布 | 10月 |
| 控除証明書の回収 | 電子・紙の両対応 | 11月 |
| システムテスト | 給与・年末調整ソフトの更新確認 | 11月 |
| 計算・報告 | 年末調整実施、源泉徴収票発行 | 12月〜翌1月 |
💬 経理担当者の皆さんにとっても、2025年は“過渡期の調整力”が問われる年です。
📊 6. 家計の視点で見る「年末調整2025」
年末調整は、単なる税金の清算ではなく、
家計の健康診断でもあります。
- 控除を最大限に活かすことで可処分所得が増える
- 扶養・配偶者控除の見直しは働き方の見直しにもつながる
- 医療費やiDeCoなど、確定申告を組み合わせることでさらに節税が可能
「よく分からないから会社に任せる」ではなく、
「自分の家計を見直すきっかけ」として捉えることが大切です。
✏️ 7. まとめ ― “制度を知る人”が得をする時代へ
2025年の年末調整は、「制度」「家計」「デジタル化」が交わる転換点です。
控除の拡充で負担が軽くなり、電子化で手間が減る一方で、
正しく理解していないと、控除を受け損ねるリスクもあります。
だからこそ――
制度を知る人ほど、得をする時代。
今年はぜひ、「書くだけの年末調整」から「考える年末調整」へ。
あなたの家計を守り、未来をつくる第一歩にしていきましょう。
出典:
『企業実務』2025年8月号
「年末調整に向けた『基礎控除の見直し等』『特定親族特別控除』の準備実務」
国税庁「令和7年版 年末調整のしかた」
総務省マイナポータルガイド ほか
🗂 シリーズ一覧(全8回)
本編シリーズ
1️⃣ 103万円の壁から160万円の壁へ
2️⃣ 基礎控除の見直しと特例加算
3️⃣ 特定親族特別控除とは
4️⃣ 年末調整の準備とチェックポイント
5️⃣ 総まとめ:新時代の年末調整をどう乗り切るか
補足シリーズ
6️⃣ 保険料・地震保険控除の最新ルール
7️⃣ 住宅ローン・ふるさと納税・医療費控除・iDeCo
8️⃣ 電子化で変わる年末調整(マイナポータル連携)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

