ふるさと納税は、寄付者にとっては返礼品を楽しめる制度であり、自治体にとっては貴重な歳入源でもあります。一方で、返礼品競争の過熱や自治体間の税収偏在など、制度の持続性に関する課題も指摘されてきました。
2025年10月にポータルサイトによるポイント還元が全面禁止され、制度は次のフェーズに入りました。
最終回となる第5回では、今回の改正の背景と、今後どのような制度変更が予想されるのか、生活者向けに分かりやすく整理します。
1. まず押さえたい「2025年10月改正」の位置づけ
今回の改正は、ポータルサイトが寄付に対してポイントを付与することを禁止する内容でした。
【背景】
- 過度な返礼競争の抑制
- 寄付額の“名目上のつり上げ”を防止
- 本来の目的(自治体支援)と乖離した利用の是正
これにより、制度は「返礼品の価値」そのものに焦点が戻り、寄付者と自治体のバランスを取り戻す方向に動いています。
2. 過去の制度改正も「返礼競争の抑制」が軸
ふるさと納税は過去にも大きなルール変更を経ています。
【代表例】
- 2019年:返礼品の価値は寄付額の3割以下
- 2019年:返礼品は地場産品のみ
- 2023年:事務委託料のルール厳格化
- 2024年:返礼品経費に対する基準の再整理
- 2025年:サイトポイント禁止
これらの流れは一貫して「競争の過熱を抑え、制度を持続可能にする」ことを目的としています。
2025年以降の制度改正も、この延長線上にあると考えられます。
3. 今後予想される制度改正と方向性
現時点で正式に決まっているものはありませんが、政府・総務省の議論や過去の傾向から、次のような方向性が見えるようになっています。
(1)返礼品の基準のさらなる厳格化
- 寄付額と返礼品価値のバランスチェックの強化
- 加工品の“地場産品基準”の細分化
- サービス型返礼品(宿泊券・体験型)の要件整理
自治体によって判断が揺れる部分の“統一ルール化”が進む可能性があります。
(2)自治体公式サイトの強化
- ポータルサイト依存を軽減
- 自治体公式での寄付受付を広げる
- 手数料・返礼品経費の透明化
自治体側の収入が安定し、返礼品のバリエーションが広がる可能性があります。
(3)ポイント充当サービスの見直し
共通ポイントの利用は規制対象外ですが、今後の議論の動向次第では何らかの整理が入る可能性もあります。
現状では、
- 楽天ポイント
- dポイント
- Pontaポイント
- PayPayポイント
- Vポイント(2025年対応予定)
と、利用可能なポイントは増加傾向にあります。
政府がどこまで“寄付の実質負担を下げる仕組み”を許容するかは、今後の焦点になりえます。
(4)控除制度そのものの見直し
ふるさと納税の控除は“住民税所得割額の2割”が上限です。
社会保障改革や地方財政の状況次第では、この上限自体が見直される可能性もゼロではありません。
現行制度は寄付者にとっては魅力が大きいため、将来的には調整議論が起こることが予想されます。
4. 一方で、体験型・地域密着型返礼品は拡大傾向
規制が強化される一方で、自治体による“地域活性化型返礼品”は今後も拡大が予想されます。
【例】
- 宿泊券・温泉利用券
- 農家体験・漁業体験
- 地域企業のサブスク
- 特産品を使った料理体験
- 工芸品のワークショップ
返礼品の“物”から“体験”へのシフトが進むことで、寄付者の選択肢がさらに広がります。
5. 寄付者に求められる姿勢は「制度の変化に合わせる」こと
今後、ふるさと納税が廃止される可能性は低いとされています。
理由は、
- 地方財源にとって重要な存在になっている
- 寄付者の利用も多く、国民的に浸透している
ためです。
ただし、制度が続く以上、今後も一定の見直しは繰り返されると考えられます。
大切なのは、
「毎年の制度変更を確認しながら、柔軟に活用する」
という姿勢です。
結論
2025年のポイント還元禁止は、ふるさと納税制度の持続可能性を高める方向での見直しの一環です。
今後も返礼品競争の抑制、自治体サイトの強化、返礼品基準のさらなる整理などが進む可能性があります。
一方で、体験型・サービス型返礼品など、新しい魅力も増えつつあります。
ふるさと納税を賢く使うポイントは、
- 制度の動きを毎年チェックすること
- 家計の節約につながる返礼品を選ぶこと
- 増量ポイントや比較サイトを活用すること
の3点に集約されます。
制度の変化を味方にしながら、自分らしい“お得で豊かなふるさと納税”を続けていきましょう。
出典
・総務省 ふるさと納税制度資料
・日本経済新聞 ふるさと納税関連記事
・自治体公式サイト
・主要ポータルサイトの運営指針
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
