【第4回】年末調整の準備とチェックポイント ― ミスを防ぐ3つのステップ

税理士
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毎年11月から12月にかけて行われる「年末調整」。
会社員の多くが経験しますが、実はこの時期に行う作業は、1年分の所得税を正確に精算する大切な手続きです。

2025年は、これまでの年末調整とは大きく違います。
基礎控除の見直しや特定親族特別控除の新設など、申告書の様式や確認内容が一新されるため、準備を怠るとミスが起きやすい年です。


🧾 1. 年末調整の目的をおさらい

年末調整とは、会社が従業員に代わって、1年間の所得税を再計算して精算する制度です。

毎月の給与からは概算の税額が源泉徴収されていますが、
実際には所得控除(基礎控除・扶養控除・生命保険料控除など)を反映した「本来の税額」に調整する必要があります。

この再計算を行い、払いすぎた税金があれば還付、不足があれば追加徴収される――
それが年末調整です。


📘 2. 2025年の改正で変わるポイント

2025年の年末調整で注目すべきは、控除関連の大幅な変更です。

(1)基礎控除の金額アップ

前回解説したように、全員が対象の基礎控除が48万円 → 58万円(特例加算で最大95万円)に引き上げられます。
これに伴い、申告書に「所得金額に応じた特例区分」を記入する欄が追加されます。

(2)新設「特定親族特別控除」

大学生など19〜22歳の子どもを扶養する場合、
「給与所得者の特定親族特別控除申告書」の提出が必要になります。
これが今回の年末調整の最大の新項目です

(3)様式の変更と電子化の進展

国税庁は新しい申告書を公表予定で、
電子申告システム(年末調整ソフト)でも対応が進められています。
企業はシステム更新を早めに確認しておく必要があります。


🧩 3. ミスを防ぐ「3つのステップ」

ステップ①:従業員への周知

まず大切なのは、従業員に「制度が変わったこと」を知らせること。
特に以下の点を社内告知するとスムーズです。

  • 「基礎控除額」「特例加算」の変更点
  • 「特定親族特別控除」の新設と対象範囲
  • 提出書類の種類と期限

ポスターや社内メール、イントラ掲示板などを活用し、年内早めの周知を心がけましょう。


ステップ②:申告書の正しい回収と確認

控除の内容が増える分、チェック項目も増えます。
経理・人事担当者は次の点を重点的に確認しましょう。

  • 所得区分(58万円以下/123万円以下など)の誤り
  • 親族の二重申告(夫婦で同じ子を扶養)
  • 添付書類(保険料控除証明書など)の不足

ミスを防ぐポイントは、“数字を急がず関係を整理する”ことです。


ステップ③:システム・帳票の更新

給与システムや年末調整ソフトが改正後の控除額・様式に対応しているか確認します。
特に自社開発システムや旧バージョンの会計ソフトを使っている場合は注意が必要です。

あわせて、帳票の印刷設定やマイナンバー管理、電子申告との連携テストも行っておくと安心です。


🗓 年末調整スケジュールの目安

時期主な作業内容
7〜9月国税庁サイトで改正内容を確認、社内説明資料を準備
10〜11月新様式の配布、従業員説明会、申告書回収
12月年末調整計算、源泉徴収票の発行準備
翌年1〜2月法定調書の提出、次年度改善点の整理

🧮 4. 共働き世帯・学生扶養世帯は特に要注意

今回の改正では、共働き世帯や学生の扶養がある家庭ほど申告内容が複雑になります。

  • 夫婦の両方が「同じ子どもを扶養」にしていないか
  • 学生のアルバイト収入が150万円を超えた場合の控除判定
  • 年の途中で転職・出産があった場合の控除の重複有無

家庭ごとに状況が違うため、「前年と同じ書き方」で提出すると誤りが起きやすい点に注意が必要です。


✏️ まとめ ― 年末調整は“家計の棚卸し”のタイミング

年末調整は「面倒な事務作業」と思われがちですが、
実は1年間の働き方・家計・控除のバランスを見直すチャンスでもあります。

2025年の改正で制度が大きく動く今こそ、
「何となく記入」から「自分で理解して申告」へと変える第一歩にしてみてください。


出典:『企業実務』2025年8月号
「年末調整に向けた『基礎控除の見直し等』『特定親族特別控除』の準備実務」
(税理士法人AOIみらい・長坂京)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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