第1回ではMMF(マネー・マーケット・ファンド)の基礎知識を、
第2回では「なぜ今復活するのか?」という経済的背景を整理しました。
今回の第3回では、復活するMMFが「単なる再登場」ではなく、デジタル技術を取り込んで進化する点に注目します。
1. ブロックチェーンが金融に広がる背景
ブロックチェーンと聞くと「暗号資産(仮想通貨)」をイメージする人が多いかもしれません。
しかし、近年では 「金融インフラを効率化する技術」 として利用が広がっています。
- 改ざんが難しい
- 取引を即時に記録・共有できる
- 中央の管理者を介さずに処理できる
こうした特徴から、証券・債券・送金といった分野でも活用が進んでいるのです。
2. Progmat(プログマ)が担う役割
日本のMMF復活の仕組みを支えるのが、**Progmat(プログマ)**というシステム基盤です。
これは3メガバンクグループが出資し、証券会社・運用会社など約50社が参加しているプロジェクトで、金融商品のデジタル化を進めています。
MMFもこのプログマを通じてデジタル化され、複数の金融機関から組成・販売される予定です。
3. 米国で広がる「デジタルMMF」
参考になるのが米国の事例です。
米国では、米国債を運用対象としたMMFをブロックチェーン上で発行し、投資家がデジタル証券の形で保有できる仕組みが登場しています。
特徴的なのは、分配の自動化です。
通常のMMFでは分配金が月に1回支払われるのが一般的ですが、ブロックチェーンを活用することで、
- 1日複数回の分配が可能
- 分配金を即座に再投資できる
といった利便性が実現しました。
投資家にとっては「お金が遊ぶ時間」を最小限にできるため、効率的に資産を増やすことができます。
4. 日本版デジタルMMFの可能性
日本でも、こうした仕組みの導入が検討されています。
すでに法的な整理も進み、商品化の段階に入ったと報じられています。
もし導入されれば、私たちは次のようなメリットを享受できるかもしれません。
- 分配金の即時反映 → 受け取った利息をすぐ再投資できる
- 透明性の高い運用 → ブロックチェーン上で取引履歴が明確になる
- コスト削減効果 → システム効率化によって手数料が下がる可能性
これまでの「MMF=シンプルで低リスクの商品」という枠を超えて、テクノロジーと金融の融合商品として進化する期待があります。
5. 投資家から見た注意点
もちろん、新しい技術には注意点もあります。
- システム障害や技術的なリスク
- 法制度の整備が完全ではない部分
- 新サービスならではの運用実績不足
従来型のMMFと同じく低リスク商品とはいえ、「デジタル化」という要素が加わることで、新しいタイプのリスクも理解しておく必要があります。
まとめ
かつて「預金の少し上」の存在だったMMFは、
復活にあたって ブロックチェーンを活用したデジタル商品として新しい姿を見せようとしています。
- 低リスクで安定的な運用
- デジタル化による利便性向上
- 日本でも2026年前半から販売再開
MMFは、ただの復活ではなく、進化した資産運用商品として生活者の前に登場するのです。
次回の第4回では、実際に「MMFが私たちの家計にどう役立つのか?」という視点で、預金や国債と比較しながら具体的に整理していきます。
📌 参考:
国内MMF、9年ぶり復活(日本経済新聞 2025年10月2日)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO91675410S5A001C2MM8000/
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
