「銀行に預けてもお金がほとんど増えない」。そんな時代が長く続きました。
しかし、2024年に日銀がマイナス金利を解除し、「金利ある世界」が戻ってきたことで、お金の置き場所に新しい選択肢が生まれようとしています。
そのひとつが MMF(マネー・マーケット・ファンド)。
9年ぶりに復活する予定のこの商品は、かつて多くの個人投資家に利用されていました。
今回はその「MMFとは何か」を基礎から解説していきます。
1. MMFの基本的な仕組み
MMFは「投資信託」の一種です。投資信託と聞くと株や投資リスクをイメージする人も多いですが、MMFはその中でも とてもリスクの低い商品 に位置づけられます。
どんな資産で運用するの?
- 国が発行する 国債
- 信頼度の高い企業が発行する 短期の社債
- 金融機関が発行する CP(コマーシャル・ペーパー)
こうした「短期間で返済される安全性の高い債券」に投資するため、値動きの幅は小さく、元本割れの可能性は極めて低いのが特徴です。
2. 預金と似ている?違う?
預金との共通点
- 元本割れリスクがほとんどない
- 比較的安全にお金を置いておける
預金との違い
- 元本保証がない(法律上は投資信託)
- ペイオフの対象外(銀行預金は1,000万円まで保証があるが、MMFは対象外)
- 利回りは預金よりも やや高め に設定される
つまり、MMFは「預金に近い安心感はあるが、あくまで投資商品」という立ち位置です。
3. かつてのMMFの実績
MMFが活発に販売されていた2000年代、利回りは 年0.3~0.5%程度 でした。
当時の普通預金金利(0.1%以下)と比べると明らかに有利で、多くの個人マネーがMMFに流れていきました。
たとえば、100万円を1年間預けると:
- 普通預金 → 利息 約1,000円
- MMF(0.5%) → 利息 約5,000円
この差は小さいようでいて、預金金利が極めて低い時代には「お得」と感じる人が多かったのです。
4. 2016年に消えた理由
そんなMMFも、2016年に姿を消しました。理由は 日銀のマイナス金利政策です。
マイナス金利により国債利回りが急低下し、MMFの運用は成り立たなくなりました。利回りゼロどころか、元本を割り込む可能性すらあったため、金融機関は販売を停止せざるを得ませんでした。
言い換えれば、金利が低すぎて存在できなかった商品だったのです。
5. MMFはどんな人に向いている?
MMFは「投資は不安だけど、預金だけではもったいない」と感じる人におすすめできる商品です。
- 預金よりも 少し有利な利回り を得たい人
- 大きなリスクはとりたくない人
- 投資を始める最初の一歩を探している人
まさに「預金と投資の間」を埋める存在だと言えます。
6. 注意点もある
もちろんMMFにも注意点はあります。
- 元本保証はない(ただし元本割れはほとんどない)
- 利回りは金利次第(将来金利が下がれば利回りも下がる)
- 預金のような即時払い戻しはできない場合がある(解約に数日かかるケースもある)
完全に「預金と同じ感覚」で利用するのではなく、投資商品として最低限のリスクはあることを理解しておきましょう。
7. 今なぜ注目されるのか?
2024年にマイナス金利が解除され、国債利回りは1.6%台にまで上昇しました。
銀行の普通預金金利も少しずつ上がっていますが、それでもまだ平均0.2%程度。
もし復活するMMFが0.5%前後の利回りを実現すれば、預金との差は再び大きくなります。
「ちょっとでも有利にお金を置きたい」というニーズに応える商品として、再び脚光を浴びるのです。
まとめ
MMFは、
- 預金より利回りが高く、
- 投資よりリスクが低い、
という「中間的な存在」として人気を集めてきました。
2016年に消えたのは「金利ゼロの世界」だったから。
そして2026年、再び「金利ある世界」が戻り、MMFも復活しようとしています。
次回の第2回では、なぜ今MMFが復活するのか? ~日本経済の転換点~ について、金利やインフレの流れと合わせて詳しく解説していきます。
📌 参考:
国内MMF、9年ぶり復活(日本経済新聞 2025年10月2日)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO91675410S5A001C2MM8000/
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

