【リスキリング時代のキャリア戦略シリーズ】第3回 学びを継続するための習慣づくりと、企業制度との上手な付き合い方

FP
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学び直しを始めることよりも難しいのは、それを「続けること」です。誰もが経験するように、学習は気持ちの波や仕事の忙しさに左右されます。最初の数日は意欲に満ちていても、1週間もすれば日常のペースに引き戻され、気づくと手が止まってしまうことがあります。

また、学び直しが個人だけの努力で完結するわけではありません。企業がどのような制度や文化を整えているかによって、個人の成長スピードは大きく変わります。仕事と学びを両立させるうえで、企業の制度をどう活用するかも重要なポイントです。

本稿では、リスキリングを「習慣」へと変えるための具体的な方法と、企業制度の利用・対話のコツを体系的にまとめます。

1 継続できる人は「気持ちに頼らない仕組み」を持っている

学び直しが続かない理由を多くの人は「やる気が出ない」に求めがちです。しかし実際には、継続においてやる気はほとんど関係ありません。集中できない日があるのは当然であり、むしろ“気持ちに左右されない仕組み”をつくる方が、持続にはよほど効果的です。

・「迷ったらやる」のルール化

やるかやらないか迷う瞬間こそ、最も感情に流されやすくなります。そこで有効なのが、「迷ったら、5分だけやる」と決めておくことです。学びの多くは、始めてしまえば勢いがつくものです。

・“ゼロの日”をつくらない

継続の最大の敵は、「1週間空いてしまうこと」です。ゼロの日が続くと、再スタートに大きなエネルギーが必要になります。忙しい日は以下のような極小タスクで十分です。

  • 英単語を3つだけ見る
  • YouTubeで1分の解説を見る
  • ポッドキャストを1分聴く
  • 生成AIに質問をひとつ投げる

たとえ数分でも、連続性が途切れなければ習慣は維持されます。

・学びは“行動ごと”に短く区切る

長時間の学習目標を設定すると挫折しやすくなります。行動単位をできるだけ細かくし、「完了できた」という感覚を積み重ねることが継続を強化します。

  • Chapter1だけ読む
  • 5問だけ解く
  • 動画を半分だけ観る

この“完了感の積み重ね”が、学びのセルフイメージを大きく変えます。


2 アウトプットは継続の“燃料”になる

学びを続けるには、インプットだけでなくアウトプットが欠かせません。アウトプットをすることで、理解が深まり、学びの意味を実感できます。

・SNSでメモを共有する

X(旧Twitter)で「今日はこれを学んだ」と投稿するだけでも効果は絶大です。他者が反応してくれることで、学習が“誰かの役に立つ”実感につながります。

・noteの下書きに学習ログを書く

公開しなくても構いません。自分のために記録を残しておくと、“学んでいる自分”を強化できます。
また、一定期間が経つと、過去の自分との比較ができ、大きな成長を感じられます。

・生成AIと対話してアウトプットを強制的に生み出す

AIに説明したり質問をしたりすることで、学んだ内容を整理し、言語化する力が養われます。学びとAIは相性が非常に良く、継続にも役立ちます。


3 企業制度をどう活かすかで学びの効果は大きく変わる

学び直しは個人の努力で始まり、個人の努力で続きます。しかし、継続には“環境の後押し”があるほど圧倒的に実践しやすくなります。

企業側も、リスキリング支援として次のような制度を整えつつあります。

  • オンライン学習サービスの提供
  • 研修費用の補助
  • 社内講座の開放
  • キャリアシートの整備
  • 異動や社内公募制度
  • キャリア相談窓口

しかし、多くの人はこれらを使いこなせていません。なぜなら、「どう使えばいいかわからない」「遠慮してしまう」からです。

・企業制度は“遠慮なく使う”のが正解

制度は活用される前提でつくられています。企業側は“導入したけれど活用されない状態”を最も避けたいと考えています。利用率が上がれば制度はより良くなり、会社の成長につながるためです。

・上司との対話は「希望の提示」から始める

学び直しについて上司に相談する際は、次の3点を伝えると効果的です。

  1. 自分が興味を持っている分野
  2. なぜそのスキルが仕事に役立つのか
  3. 会社の成果にどうつながるか

抽象的な希望ではなく、「この学びはこう活かしたい」と伝えることで、支援を引き出しやすくなります。

・キャリアシートは“提出するだけで価値がある”

キャリアシートは自分の希望を企業に知らせる唯一の方法です。記入・提出するだけで、会社側はその人を正確に理解しやすくなります。
特に大企業では、キャリアシートが異動・育成プランに直結します。


4 “学びやすい職場”と“学びにくい職場”の見分け方

学びを続けるうえで、職場環境の影響は無視できません。企業文化やマネジメントの違いによって、同じ研修を受けても成果が大きく変わります。

・学びやすい職場

  • 上司が成長に関心を持っている
  • OJTより自己学習を尊重する
  • 成果よりプロセスを評価する
  • 挑戦に対して寛容
  • 社内部署へのアクセスが柔軟

・学びにくい職場

  • 「今の業務だけできればいい」と考える
  • 忙しさを理由に育成が後回し
  • スキル可視化の文化がない
  • 異動や公募に否定的
  • ミスに厳しく心理的安全性が低い

職場環境が学びと合わない場合、外部のリソース(オンライン講座、AI、コミュニティ)を中心に学ぶ方が現実的です。


5 学びを続ける自分を“長期的な投資先”と考える

学び直しは短期的な成果が見えにくいため、不安になる人も多いでしょう。しかし、学習の効果は積立投資のように“遅れて成果が現れる”ものです。

今日の15分の学びが、1年後のキャリアの選択肢を生み、3年後の昇進やキャリアチェンジにつながります。
長期的に見れば、学び続ける人と学びを止めた人では、キャリアの選択肢が大きく開いていきます。


結論

学び直しは、気持ちの力で続けるものではありません。習慣化の仕組み、小さなアウトプット、企業制度の活用。この三つが揃うことで、学びは驚くほど続きやすくなります。

継続は才能ではなく、環境と仕組みづくりです。そして、“ゼロの日をつくらない”という小さな約束が、長期的なキャリアの差を生みます。

次回の第4回では、学びとキャリアを結びつける「キャリアプランの立て方」を解説します。


出典

  • 日本経済新聞(2025年12月2日付・各記事)

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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