これまでパートやアルバイトで働く方にとって、大きな関心事の一つが「106万円の壁」でした。
年収が106万円を超えると社会保険に加入しなければならず、厚生年金や健康保険の保険料負担が発生するため、手取りが減ってしまうケースがありました。
特に「第3号被保険者」として配偶者の扶養に入っていた方は、年収が106万円を超えることで月1万2500円程度の保険料を負担することになり、「これ以上働くと損」と感じて働き控えをする動きが広がっていました。
厚労省が壁を撤廃する理由
2025年度から、全国すべての都道府県で最低賃金が1016円を超える見通しです。
時給1016円で週20時間働けば、年収はおよそ106万円。つまり「普通にシフトに入るだけで壁を超えてしまう」状況が生まれます。
このままでは、働きたい人が就労時間を抑えてしまい、人手不足が深刻化する可能性があります。そこで厚生労働省は、当初3年以内の施行予定を前倒しし、来春にも「106万円の壁」を撤廃する方向で調整しています。
具体的に何が変わるのか
現在、社会保険に加入する条件は大きく3つあります。
- 月収8万8000円以上(=年収106万円以上)
- 週20時間以上勤務
- 従業員51人以上の企業に勤務
このうち、1の賃金要件が撤廃されます。
つまり、最低賃金や収入の多寡にかかわらず、週20時間以上勤務していれば社会保険に加入する方向になります。
また、3の「企業規模要件」についても段階的に撤廃され、2035年10月には全企業で社会保険加入の対象になる予定です。
今後の「20時間の壁」
賃金要件がなくなったことで、次に注目されるのは「20時間の壁」です。
週20時間未満で働けば社会保険加入を避けられるため、勤務時間を調整する動きが広がる可能性があります。
これにより、
- 「扶養の範囲内で働きたい」人は週19時間以内に調整
- 「保険料を払ってでも厚生年金を積みたい」人は週20時間以上勤務
という二極化が進むかもしれません。
働く人にとってのメリット・デメリット
メリット
- 厚生年金に加入できるため、将来の年金額が増える
- 健康保険の傷病手当金や出産手当金など、保障が拡充される
デメリット
- 毎月の手取りが減少する
- 家計全体での収入調整が必要になる
短期的には「手取りが減る」ことが心理的な壁になりますが、長期的には「社会保障が充実する」という利点があります。
まとめと個人的見解
「106万円の壁」の撤廃は、少子高齢化のなかで働き手を増やす政策的な狙いがあります。一方で、パートや主婦層にとっては「働き方の選択」を迫られる局面でもあります。
- 「今の生活費を重視して勤務時間を抑える」
- 「将来の年金や保障を重視して週20時間以上働く」
どちらを選ぶかは家庭ごとの事情によります。
ただし重要なのは、「壁を意識して働くのではなく、自分に合ったライフプランに合わせて働き方を選べるようになる」ことです。今回の改革が、そのきっかけになるのではないでしょうか。
👉 今後は「20時間の壁」や「扶養控除の見直し」なども注目されます。次回はこれらの動きが家計や働き方にどう影響するかを取り上げたいと思います。
(参考 2025年9月6日付日経新聞朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

