これまで「106万円の壁」は、従業員側だけでなく企業側にとっても悩みの種でした。
- 「壁を超えないようにシフトを減らしてほしい」と言われる
- 急なシフト調整で現場が回らなくなる
- 人手不足の中で働きたい人が働けない
こうしたミスマッチが日常的に起きており、特に小売・飲食・介護といった人材不足業種では深刻でした。
壁撤廃で広がる雇用の選択肢
「106万円の壁」が撤廃されると、企業は次のような雇用戦略を検討できます。
- シフト拡大
働き控えが減れば「もっと働きたい」人をフル活用できる - 安定した戦力化
短時間シフトの入れ替えではなく、長めの勤務をお願いできる - 福利厚生による魅力化
社会保険に加入できることを「安心のパート採用」として打ち出せる
結果として、「人材確保」と「定着率の向上」につながる可能性があります。
企業側の新たな負担
ただし、企業にとってプラス面だけではありません。
- 社会保険料の事業主負担が増える
- 経理・人事部門の事務コストが増加する
- 週20時間を超えるパートが増えると、労務管理の複雑化が進む
つまり、「人材確保のメリット」 vs 「コスト増のデメリット」をどうバランスさせるかが課題になります。
「20時間の壁」とのせめぎ合い
一方で、「20時間の壁」が残るため、企業は以下の選択に迫られます。
- 20時間未満に抑える採用戦略
→ 保険料負担を回避できるが、人手不足は解消しにくい - 20時間以上勤務を前提とした採用戦略
→ 社会保険加入コストは増えるが、長期戦力を確保できる
この選択が、業種や企業規模によって分かれていくことになるでしょう。
企業が取るべきアクション
今後の変化を見据えて、企業が検討すべき対応策は次の通りです。
- 人件費シミュレーション
社会保険加入者の増加に伴うコストを試算する - シフト戦略の見直し
「20時間未満」と「20時間以上」で職務設計を分ける - 福利厚生を強みにする
「社会保険に加入できる安心パート」をアピールする - 人材定着施策
教育・研修を通じて短時間労働者を長期戦力化する
まとめ
「106万円の壁」の撤廃は、企業にとって採用・人件費・働き方の設計を大きく変える転換点です。
- 短時間労働を中心に採用するか
- 安定戦力として社会保険加入を前提に採用するか
- 福利厚生を活かした採用ブランディングを強化するか
人手不足が続く中、企業は今後「人をどう雇い、どう活かすか」という戦略を根本から見直す必要があります。
👉 次回は、今回の制度改正が 「社会保障制度全体」 にどのような影響を及ぼすのかを取り上げたいと思います。
(参考 2025年9月6日付日経新聞朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
