「高市トレード」再始動か──積極財政で円安・株高の期待と、金利上昇リスクのはざまで

FP

2025年10月、自民党の新総裁に高市早苗氏が選ばれました。
積極財政を掲げる政策姿勢は、市場に即座に反応を呼び起こしています。
「高市トレード」という言葉が再び聞かれるようになりました。

では、この「高市トレード」とは何か。そして、私たちの投資や家計にどんな影響を与える可能性があるのかを整理してみましょう。


■ 「高市トレード」とは何か

「高市トレード」という言葉は、2021年の総裁選以降、市場関係者の間でたびたび使われてきました。
意味するのは、高市氏の積極財政(拡張的な財政政策)や金融緩和継続への期待から、円安・株高が進む現象のことです。

過去にも、2024年9月の総裁選で高市氏優勢と見られた局面では、為替が対ドルで4円程度の円安、日経平均が約4000円上昇した実績があります。

今回も同じ構図です。
「アベノミクスの継承」「経済成長の優先」を掲げる高市氏の勝利は、市場にサプライズを与え、円売り・株買いの流れを再び強める可能性があります。


■ 円安・株高が進む背景

高市氏の基本スタンスは「積極財政×金融緩和維持」。
この組み合わせは、国内景気を刺激する一方で、金利差拡大による円安を促す効果を持ちます。

市場ではすでに、

  • 為替:1ドル=150円前後までの円安進行
  • 株価:日経平均が4万7000円台を試す可能性

といった予測が出ています。
とくに、外国人投資家による日本株買いが再燃する可能性が高いとの見方が強まっています。


■ 注目される業種・銘柄

高市政権の政策テーマと重なる分野への資金流入が期待されます。

  • 防衛関連:三菱重工、IHI、NEC、三菱電機など
  • 経済安全保障関連:NTT、FFRIセキュリティなど
  • AI・半導体関連:ソフトバンクG、アドバンテスト、東京エレクトロン

特に「安全保障×技術立国」という軸で、日本企業の再評価が進む可能性があります。
AIや半導体のほか、デジタル通信・量子技術といったテーマも政策支援を受けやすいでしょう。


■ 一方で見逃せない「金利上昇リスク」

ただし、積極財政にはもう一つの顔があります。
国債の増発による金利上昇リスクです。

東海東京証券の予測では、

  • 新発10年国債利回り:1.7%台
  • 新発30年国債利回り:3.3%近く

まで上昇しても不思議ではないとの見方が出ています。

金利が上がれば、債券価格は下がります。
過去には英国で、財源の裏付けが不十分な減税政策が「金利上昇・通貨安・株安」のトリプル安を招いた事例(トラス政権時)もあります。
日本でも似た構図になれば、投資家心理が一気に冷える可能性は否定できません。


■ 少数与党という不安要素

さらに政治面では、高市政権が少数与党での船出となる点も注目されています。
政策をどこまで実行できるか、与野党の協調をどう築くかが、今後の市場動向を左右します。

米GMOのファンドマネージャーは「再び“回転ドア政治”に戻るリスクもある」と指摘。
また、みずほ証券の菊地チーフストラテジストも「株高が一巡した後は、実行力の有無を見極める局面に入る」と分析しています。


■ 投資家・家計が意識すべき視点

今回の「高市トレード」は短期的な市場現象にとどまらず、中長期の日本経済の方向性を占う試金石にもなりそうです。

  • 円安を背景に輸出企業の収益改善
  • 政府支出拡大による景気の底上げ
  • 一方で、金利上昇と債券価格下落のリスク
  • 家計には、住宅ローン金利や物価上昇という形での影響も

政策の成果と市場の反応のバランスを見極めながら、「株式」「債券」「外貨」「物価」という4つの軸を意識した資産運用が重要になるでしょう。


■ おわりに

新政権発足直後の市場は、期待と警戒が入り混じるものです。
高市トレードの再来は、日本経済が“積極財政”に舵を切る象徴的な出来事といえます。

ただし、期待先行の相場には波もあります。
焦らずに政策の中身と市場の地合いを見極めながら、「短期の波」よりも「中長期の潮流」を意識することが、これからの投資に欠かせない視点です。


📘出典:2025年10月6日 日本経済新聞朝刊
「『高市トレード』再始動へ」
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO91750010V01C25A0NN1000/


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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