「静かな退職」と人生100年時代― 働き方を変えれば、生き方が変わる

人生100年時代
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最近、「静かな退職(Quiet Quitting)」という言葉を耳にするようになりました。
会社を辞めるわけではないけれど、
残業をやめ、与えられた仕事を淡々とこなして帰る。
“自分の人生を仕事に奪われない”という静かな意思表示です。

少し前までなら「やる気がない」「甘えている」と言われたかもしれません。
でも、人生100年時代を迎えた今、
この考え方はむしろ「理にかなっている」と言えるのではないでしょうか。


🕰 働く期間が、60年に伸びる時代

今の20代が100歳まで生きるとしたら、
働く期間はおそらく60年近くになります。
かつての「定年60歳、悠々自適な老後」なんてもう現実的ではありません。

人生のステージが長くなったぶん、
“どこで全力を出すか”を考えることが必要になりました。
ずっと走り続けることはできません。
途中で立ち止まり、
「自分は何のために働いているのか」
「今の働き方で、10年後も幸せだろうか」
――そんな問いを立てることが、長く働く時代の前提になるのです。


💭 「静かな退職」は、人生を見直すサイン

アメリカでは、ある20代の女性がSNSでこうつぶやきました。
「9時から5時の仕事にもう耐えられない。疲れて何もできない」
この動画が大きな共感を呼び、“静かな退職”という言葉が広がりました。

これは「仕事をサボる」という話ではありません。
むしろ、人生全体を見直すきっかけです。
身を粉にして働いても報われない。
それなら、自分の時間・家族・趣味を大切にして生きたい――。
そんな素朴な気持ちが、静かな退職を生み出しているのです。


🌍 世界では“仕事よりも人生”が主軸

イギリスのデザイン会社「UNIT9(ユニット・ナイン)」では、
午後5時になると全員が帰宅します。
世界的に評価の高い企業であっても、
「時間ではなく成果」で評価する文化が根づいています。

「長く働く=良い仕事」ではなく、
「続けられる=良い働き方」。
これが、100年時代における働く人の新しいスタンダードです。


📚 日本でも広がる“働かない勇気”

日本でも、作家・三宅香帆さんの著書
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』がベストセラーになりました。
仕事に追われ、文化的な営みや人との関わりが減っていく。
この現実に、世代を問わず多くの人が共感しました。

働くことが人生の中心になりすぎた結果、
“生きる時間”がどんどん細ってしまっている。
静かな退職とは、そんな偏りを正す“リセットボタン”なのかもしれません。


🌱 長く生きるために、「ペースを保つ働き方」を

人生100年時代を生きるうえで大切なのは、
瞬発力ではなく持久力です。

これからの時代に必要なのは、
「頑張る」よりも「続けられる」働き方。
静かな退職は、そうした“サステナブルな生き方”への第一歩です。


🧮 【FP・ライフプラン設計の視点から】

「静かな退職」は“生涯設計のバランス調整”

FPとして見ていると、「静かな退職」は単なるトレンドではなく、
ライフプラン再設計のサインだと感じます。

ここで大切なのは、
「働き方」「お金」「時間」「健康」「学び」――この5つの資源をどう配分するかです。
どれか1つに偏ると、100年人生では必ず“ゆがみ”が出てきます。


🏡 1. 収入のピークを“短距離走”にしない

多くの人が40~50代をキャリアのピークと考えがちですが、
定年後も続く人生を見据えれば、“長距離走の設計”が必要です。

若いうちは無理をしてもいいけれど、
そのエネルギーを60歳以降まで持たせることができるか。
年金、退職金、再雇用、副業収入などを組み合わせ、
「走り続けられる働き方」を計画的に組み立てることがポイントです。


📈 2. 働き方に合わせて「お金の使い方」を変える

静かな退職を選ぶ人の中には、
「収入が減るのが怖い」と不安を感じる人も少なくありません。
でも大切なのは、“お金を減らさず、使い方を整える”ことです。

たとえば――

  • 固定費を下げて可処分所得を増やす
  • 自分への投資(スキル・健康・人脈)を支出に組み込む
  • 無理のないペースで貯蓄・投資を続ける

これらは、「静かな退職」後も生活を安定させるための防波堤になります。


💬 3. “仕事の意味”を再定義する

ライフプランとは、単にお金の計算ではなく、生き方の設計図です。
だからこそ、「働くとは何か」を見つめ直すことが欠かせません。

FP相談の現場でも、
「働くことは収入を得る手段」から、
「社会とつながる・学び続けるための場」と考える人が増えています。

つまり、静かな退職とは“働くを休む”ことではなく、
働くことの再定義なんです。


🧘‍♀️ 4. 「貯める」だけでなく「余白を残す」

人生100年時代のライフプランでは、
“お金を貯める力”よりも、“余白をつくる力”が大切です。

余白とは、
・体調を崩したときの時間的ゆとり
・学び直しに使える期間
・家族や友人との関係を深める時間

これらを資産の一部と考えることが、
100年時代のリスクマネジメントになります。


🔁 「静かな退職」は、人生をチューニングする行為

働き方を変えるというのは、
人生全体の“音のバランス”を調整するようなものです。

静かな退職は、決して逃げではなく、
人生のリズムを整えるリチューニング(再調律)なんです。

  • 無理を減らすことで、長く走れる
  • 時間に余裕が生まれることで、学びや家族との時間が増える
  • 結果として、心の豊かさも回復する

この循環こそが、人生100年時代を“しなやかに”生き抜く力になるのだと思います。


🌸 おわりに ― 「頑張る」から「続ける」へ

私たちはこれまで、「頑張る」ことを美徳としてきました。
でも、これからは「続ける」ことの方がずっと価値がある時代です。

“静かな退職”は、
そのために必要な勇気ある選択です。

働き方を見直すことは、
生き方を見直すこと。
静かに立ち止まることが、
次のステージへの準備になる。

それが、人生100年時代を生きる私たちへの、新しいメッセージなのだと思います。


📖 参考
〈多様性 私の視点〉「静かな退職」のすすめ(日本経済新聞 2025年10月13日)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO91900600S5A011C2TYA000/?n_cid=dsapp_share_ios


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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