「貯蓄から投資へ」――倍増する個人マネーと日本の意識変化

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■ 現金主義の国に変化の兆し

長く「貯蓄大国」と呼ばれてきた日本。
しかし今、その構図が静かに、そして確実に変わり始めています。

日本経済新聞が約1900人を対象に実施したアンケートによると、毎月の新規投資額の中央値は10万円台。特に20~40代では、3割が3年前の2倍以上に投資額を増やしているとの結果が出ました。

きっかけはやはり、2024年から始まった新しいNISA(少額投資非課税制度)
「現預金を取り崩してでも投資へ」という動きが広がっています。


■ NISAが投資マインドを変えた

東京都在住の30代男性は、2年前から本格的に投資を開始。
「現金と株・投信を5対5にしたい」と語り、毎月30万円をNISA経由で投資に回しています。
別の40代システムエンジニアも「生活費6カ月分を残して、残りは投資へ」と話します。

つまり、“余ったお金で投資する”から“目的を持って投資する”へ
ライフプランやリスク許容度を前提にした合理的な投資行動が広がっています。


■ 家計構造の違い――米国と日本の差

日本の家計金融資産のうち、51%が現預金株・投信は18%
一方で、米国では現預金12%、株・投信55%と真逆の構図です。

この差を埋めるには、「金融知識」と「経験」の両輪が欠かせません。
実際、日経の調査では金融リテラシー満点(5点)の人の83%が投資経験あり。
一方で、知識が乏しい層では投資率が低く、“知らないこと”が最大のリスクになっていることが浮かび上がりました。


■ “老後2000万円問題”とインフレが後押し

投資目的のトップは、老後資産形成(67%)とインフレ対策(49%)
「お金の価値が目減りする時代、投資しないリスクの方が大きい」と感じる人が増えています。

実際、働く世代の間では“お金に働かせる”という考えが浸透しつつあります。
かつては「投資=危ないもの」という印象が強かった日本社会に、着実な価値観の変化が生まれているのです。


■ 金融教育が広げる“投資する力”

こうした流れを支えるのが、政府主導の金融教育です。
2024年4月に設立された金融経済教育推進機構(J-FLEC)は、講師派遣や講義を通じて全国で金融リテラシー向上を図っています。
半年間で1600件もの講義が行われ、大学生から社会人まで幅広く関心が高まっています。

ある大学生はこう話します。

「正しい知識を身につけたら、投資を始めてもいいと思えた」

まさに、知識が自信を生み、行動を促しているのです。


■ 税理士・FPの視点から見た「貯蓄から投資へ」

私たち専門家から見ると、いま重要なのは「制度の活用」と「リスク管理」の両立です。

  • NISAやiDeCoを活かして、非課税の“器”を使い切ること
  • 投資と現預金の比率をライフプランに合わせて調整すること
  • インフレ率を意識して、実質的な購買力を守ること

投資は「増やす」だけでなく、「守る」手段でもあります。
物価上昇が続く今こそ、“お金を眠らせない家計”への転換が問われています。


■ まとめ:「倍増世代」が日本を変える

20~40代の3割が投資額を倍増させたという今回の調査結果。
これは単なる数字ではなく、新しい時代のマネー文化の始まりを示しています。

長らく「運用貧国」と呼ばれてきた日本も、ようやく脱皮の兆しが見えてきました。
貯蓄から投資へ――。
これは政府のスローガンではなく、私たち一人ひとりの行動がつくる社会的変化なのです。


📘参考
日本経済新聞(2025年10月14日朝刊)
「〈資本騒乱 さらば運用貧国〉貯蓄から投資、『倍増』が3割」
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO91909580U5A011C2MM8000/


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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