「給付付き税額控除」とは何か― 物価高の中で問われる“新しい支援の形”

政策

自民党の新総裁に、高市早苗氏が選ばれました。
日本で初めての女性総裁であり、近く女性首相として誕生する見通しです。

高市氏が就任会見で最初に掲げた政策が、
「物価高対策に力を注ぐ」そして「責任ある積極財政」。
中でも注目されるのが、中低所得者への直接支援としての『給付付き税額控除』です。


◆「減税+給付」の新しいかたち

「給付付き税額控除」は、所得が少なくて税金をあまり払っていない層にも、
実質的な“現金給付”を行える減税制度です。
海外ではすでに定着しており、アメリカでは「勤労所得税額控除(EITC)」として、
低所得世帯への就労支援と所得補填を両立しています。

日本でも過去に導入が検討されてきましたが、
所得把握の遅れや、行政コストの高さが課題となって見送られてきました。
今回、高市氏が「ベストな方法を打ち出す」と明言したことで、
政治のテーブルに戻ってきた格好です。


◆背景にある“生活の実感”

消費者物価は依然として高止まりしています。
賃上げが進んだとはいえ、中小企業や非正規労働者にはその実感が乏しい。
特に、単身・子育て世帯・年金生活者などは、
食料・エネルギー価格の上昇に直撃されています。

こうした層に「減税の恩恵が届きにくい」ことは、
これまでの経済対策の盲点でした。
そこで、課税最低限以下の層にも給付できる制度として、
給付付き税額控除が再び注目されているのです。


◆課題は「スピードと公平性」

しかし制度化は簡単ではありません。
導入には、いくつかのハードルがあります。

  • 所得把握をどう迅速化するか(マイナンバー・源泉徴収データの活用)
  • 年収の“崖”を作らないなだらかな仕組み
  • 一時的支援か、恒久制度化か
  • 対象をどう線引きするか(単身・子育て・高齢世帯の扱い)

一方で、デジタル化の進展によって、
給付と税の情報をオンラインで紐づける仕組みが整いつつあります。
かつては「技術的に難しい」とされていた制度も、
今なら実現可能性が高まっているといえるでしょう。


◆家計・現場の視点から見れば

FPの立場で見れば、給付付き税額控除が機能すれば、
低所得層だけでなく「所得が安定しない層」にもプラスの影響があります。
たとえば、

  • 年度によって所得が上下するフリーランス
  • 育児・介護で時短勤務する人
  • 雇用調整の影響を受けやすいパート従業員

こうした層の可処分所得を下支えする仕組みになり得ます。
「税金を納めていないから支援を受けられない」という壁を崩せる点でも重要です。


◆政治的にも“与野党接点”のあるテーマ

興味深いのは、立憲民主党など野党も同制度の導入を提案している点です。
高市氏が率いる少数与党のもとで、
与野党協調の呼び水になる可能性があります。

物価高対策という“緊急テーマ”を軸に、
対立よりも合意形成の政治へシフトできるか。
それは新政権の手腕を測る最初の試金石になるでしょう。


◆次回予告

次回は、もう一つの焦点である
「ガソリン税の旧暫定税率廃止」と「赤字企業への賃上げ支援」を取り上げます。
「積極財政」と「財政健全化」のバランス、
その現実的な課題を掘り下げていきます。


📘 出典
2025年10月4日 日本経済新聞朝刊
「給付付き税額控除議論へ」「高市氏は難局打開へ政治再生急げ」ほか


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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