「研究開発税制」も見直し対象に― 租税特別措置の“抜本改革”は日本経済の転換点になるか

政策
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日本維新の会の藤田文武共同代表が、特定の政策目的を達成するために設けられた「租税特別措置(租特)」の見直しを改めて提起しました。
特に焦点を当てたのは「研究開発税制」。大企業中心の適用実態に対し、「経理処理上の財務テクニックになっている」と厳しく指摘しました。

藤田氏はフジテレビ番組の中で、研究開発税制について「大手企業が非常に多いので、要件を厳しくして額を絞る」と発言。
また、企業の賃上げを後押しする「賃上げ促進税制」に関しても、「賃上げしている企業に後付けで投げているのでもともと反対だ」と述べ、補助金的な性格を持つ減税措置全般に疑問を呈しました。

さらに、自民党・高市早苗総裁との対話の可能性にも触れ、「社会保険料の引き下げ」や「副首都構想」を譲れない条件としつつ、連立協議の余地を残す姿勢を示しました。


■ 「租税特別措置」とは何か

租税特別措置とは、本来の税法の一般原則を一部緩和し、特定の政策目的(たとえば研究開発促進・地域振興・賃上げ支援など)のために設けられた特例です。
一見すると「産業支援」「雇用維持」などの名目が立ちやすい制度ですが、その一方で、効果検証が不十分なまま延命されている措置も多く、「税制のブラックボックス」と呼ばれてきました。

財務省の資料によると、租税特別措置の件数はおよそ200項目に上り、毎年度の減税総額は数兆円規模に達します。
このうち、研究開発税制は大企業が中心に活用しており、中小企業では「使いたくても要件が複雑で難しい」との声が多いのが実情です。


■ 「研究開発税制」の課題

研究開発税制は企業の技術革新を支援する目的で導入されましたが、現場では“節税の道具化”が進んでいるとの指摘もあります。

たとえば、経理処理の工夫で「研究費」の範囲を広くとり、利益の圧縮や税負担の軽減を狙うケースも少なくありません。結果として、本来の「技術開発支援」という目的と乖離している面があります。

藤田氏が言う「経理処理上の財務テクニック」とは、まさにこのような運用上の問題を指しています。
研究開発費の定義や要件の厳格化、税制と補助金の整理が、今後の議論の焦点になるでしょう。


■ 「賃上げ促進税制」も再考を

賃上げ促進税制は、給与を引き上げた企業に対して法人税額を一定割合減らす制度です。政府としては「賃上げの後押し」として設計しましたが、藤田氏は「結果論的な制度」と批判しています。

実際、すでに賃上げが可能な体力のある企業ほど恩恵を受けやすく、賃上げ余力のない中小企業は恩恵を受けにくいという“逆転構造”が指摘されています。
「税で賃上げを誘導する」仕組みそのものを見直す議論が、今後は避けて通れないでしょう。


■ 維新の経済政策との接点

維新が掲げる経済政策の柱の一つに「社会保険料の引き下げ」があります。賃上げ促進税制のような後付けの支援ではなく、働く人の手取りを直接増やす方向に軸を置いています。
また、東京一極集中を是正する「副首都構想」も、成長と分散を両立させる長期ビジョンの中核です。

租税特別措置の整理・統合を通じて、よりシンプルで公平な税制をめざす姿勢は、維新の一貫した「改革志向」を象徴しているともいえるでしょう。


■ 今後の焦点:税制の透明性と政策効果

租税特別措置の是非を考える上で最も重要なのは、「どの減税が本当に社会全体に貢献しているのか」を明確にすることです。
政府の審査会でも近年、制度の「棚卸し」が進められていますが、政治的な思惑や業界団体の影響で抜本改革には至っていません。

今回の藤田氏の発言は、単なる制度批判にとどまらず、「成果主義の税制へ」という方向転換を求める一石といえます。


■ まとめ

租税特別措置の見直しは、税の公平性・透明性・簡素性を取り戻すための大きなテーマです。
研究開発税制をはじめ、どの減税が真に成長や雇用につながっているのかを検証する姿勢が、これからの政治に求められます。

藤田氏の提起は、単なる「財務テクニック批判」ではなく、今後の税制の在り方そのものを問う問題提起として注目すべき発言でしょう。


出典:
2025年10月6日 日本経済新聞朝刊 「維新・藤田氏『研究開発税制も対象に』」
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO91750450W5A001C2PE8000/)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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