「残クレ」住宅ローンは本当に家計を救うのか――返済額の軽さと引き換えに背負う“長い利息”

FP
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住宅価格の高騰が続く中、住宅ローンの組み方そのものが見直され始めています。
2026年3月にも、公的な保険を活用した「残価設定型住宅ローン」、いわゆる「残クレ」が登場する見込みです。毎月返済額を抑えられる仕組みとして注目されていますが、その一方で総利息の増加や将来負担の不透明さも指摘されています。
本稿では、「残クレ」住宅ローンの仕組みと実力、そして注意点を整理します。

残価設定型住宅ローンの仕組み

残価設定型ローンは、車やスマートフォンの購入で広く使われてきた方式です。将来の売却想定額を「残価」として設定し、その部分を毎月返済する元本から除外します。
住宅ローンに当てはめると、借入額のうち一定額を将来回収前提とすることで、月々の返済額を軽くする仕組みになります。
例えば、5,000万円を借り、1,500万円を残価とした場合、毎月返済する元本は3,500万円分に圧縮されます。

毎月返済額は確かに軽くなる

金利が年1.9%、35年返済と仮定した試算では、
通常の元利均等返済では月約16.3万円
残クレでは月約13.8万円
と、月2万円超の差が生じます。
収入に対する返済比率が重くなりがちな若年層や都市部の購入希望者にとって、心理的なハードルを下げる効果は確かにあります。

総利息はむしろ増える

一方で見落とされがちなのが、利息の計算方法です。
残クレでは、残価を含めた借入総額に対して利息がかかるのが基本です。残価部分は元本が減らないため、利息負担が長期間続きます。
先ほどの試算では、35年間の総利息は通常ローンより約440万円多くなります。
さらに、残価以外の返済終了後も、残価部分について利息のみの支払いが続く仕組みとなれば、最終的な利息負担はさらに膨らむ可能性があります。

公的保険が導入される意味

今回の制度では、将来の売却価格が残価を下回った場合でも、住宅金融支援機構の保険によって金融機関の損失が補填されます。
これにより、金融機関は残価設定を行いやすくなり、制度としての普及が見込まれています。
ただし、この保険コストが金利上乗せなどの形で利用者に転嫁されるかどうかは、現時点では明らかになっていません。転嫁されれば、残クレの「返済額の軽さ」という強みが薄れる可能性もあります。

住宅の条件と中古市場という壁

残クレの前提となるのは「将来、売却できる住宅」であることです。
そのため、耐久性や維持管理、立地などについて一定の条件が付される可能性があります。条件次第では、利用したくても対象外となるケースも想定されます。
また、日本の住宅市場では、中古住宅の将来価値を客観的に評価する仕組みが十分に定着しているとは言えません。中古市場の成熟が進まなければ、残価設定の前提自体が不安定なものになりかねません。

結論

残価設定型住宅ローンは、「今の返済を軽くする」点では確かに魅力的です。
しかしその裏側では、完済時期が曖昧になり、総利息が増え、老後まで支払いが続く可能性もあります。
住宅ローンは「借りられるか」ではなく、「返し切れるか」「いつ終わるか」が本質です。
今後公表される金利、保険コスト、対象住宅の条件を冷静に見極めたうえで、自分のライフプランと照らし合わせて判断することが欠かせません。

参考

・日本経済新聞「<ニュースが分かる>『残クレ』住宅ローンの実力は」(2026年1月24日朝刊)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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