これまで本シリーズでは、年金世代が感じる制度不信の背景を、年金、働き方、家族構成、医療・介護、収入判定、多様性という視点から整理してきました。
浮かび上がってきたのは、制度への怒りというよりも、「自分の人生が制度の想定から外れているのではないか」という不安です。
では、年金世代は、この制度とどのように向き合えばよいのでしょうか。
最終回では、不信に振り回されず、現実的に備えるための視点をまとめます。
制度を「信じるか、疑うか」で考えない
制度不信という言葉は、しばしば「制度を信用していない」という意味で使われます。
しかし、年金世代が抱いている感覚は、それほど単純ではありません。
多くの人は、
- 制度があるからこそ、ここまで安心して暮らしてこられた
- それでも、将来については不安が残る
という、相反する気持ちを同時に持っています。
制度を全面的に信じるか、全面的に疑うか、という二択で考える必要はありません。
重要なのは、制度の特徴と限界を理解したうえで、自分の人生に当てはめて考えることです。
「自分が不利になる局面」を知ることが備えになる
制度不信の多くは、
「知らないうちに不利な立場に置かれていた」
と感じた瞬間に生まれます。
逆に言えば、
- どんな場面で
- どのような理由で
- 自分の負担や扱いが変わるのか
これを事前に知っていれば、不安は大きく軽減されます。
遺族年金と老齢年金の違い、在職老齢年金、介護保険の自己負担、収入判定の考え方。
これらは制度としての是非以前に、自分にどう影響するかを把握することが重要です。
制度は万能ではないと受け止める
社会保障制度は、すべての人生を完全にカバーできる仕組みではありません。
家族構成、健康状態、資産状況、生き方の違い。
その多様性が広がるほど、制度とのズレは生じやすくなります。
年金世代が感じる不信は、制度が冷たいからではなく、
「制度が万能であるという前提が、現実に合わなくなっている」
ことから生まれています。
制度に過度な期待を寄せすぎないことも、現実的な向き合い方の一つです。
人に相談すべきタイミングを見極める
制度を理解し、自分なりに備えることは大切です。
しかし、すべてを一人で判断しようとする必要はありません。
特に、
- 年金の受け取り方を決めるとき
- 働き方を変えるとき
- 介護や住まいを考え始めたとき
こうした節目では、専門家の視点を借りることで、思い込みや見落としを防ぐことができます。
重要なのは、「困ってから相談する」のではなく、迷い始めた段階で立ち止まることです。
不信は「考えるきっかけ」に変えられる
制度不信は、決して悪い感情ではありません。
それは、自分の老後や人生を真剣に考えている証拠でもあります。
不信を、
- 制度への怒り
- 諦め
で終わらせるのではなく、
「自分はどう備えるか」
を考えるきっかけにできれば、意味のあるものに変わります。
結論
年金世代が感じる制度不信は、制度の失敗ではなく、社会と人生が変化してきた結果として生まれたものです。
制度は今も多くの人を支えていますが、すべてを委ねられる時代ではなくなりました。
だからこそ、
- 制度を理解し
- 自分に当てはめ
- 必要なところで人の力を借りる
この三つを意識することが、老後の安心につながります。
本シリーズが、年金世代にとって
「制度を疑うための材料」ではなく、
制度と冷静に向き合うための整理材料となれば幸いです。
参考
日本経済新聞
「多様性 私の視点〉遺族年金ばかり優遇、なぜ」
確定拠出年金アナリスト 大江加代氏(2026年1月26日朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

