消費税減税、とりわけ食品の消費税ゼロが議論されると、必ず出てくる意見があります。
「地方が困るなら、国が減収分を補填すればよいのではないか」という考え方です。
一見すると合理的に思えるこの発想ですが、実際の財政運営では簡単ではありません。
本稿では、なぜ「国が補填すれば解決」とは言い切れないのか、その理由を整理します。
補填は「一時的」なら可能だが、「恒久的」は難しい
過去を振り返ると、国が地方の減収を補填した例はあります。
物価高対策として実施された定額減税では、地方の税収減を臨時の交付金で埋めました。
しかし、これはあくまで一時的な措置です。
食品消費税ゼロのように、恒久的、あるいは長期にわたる減税となると、
毎年、数兆円規模の財源を国が安定的に用意し続ける必要があります。
単年度の対症療法と、制度としての補填は、難易度がまったく異なります。
補填財源はどこから持ってくるのか
国が地方にお金を配る場合、その原資は必ずどこかにあります。
新たな税収を確保しない限り、
- 他の税金の増税
- 歳出削減
- 国債発行
のいずれかに頼ることになります。
しかし、消費税減税によって国自身の税収も大きく減るため、
「国に余裕があるから補填する」という状況にはなりません。
国も同時に財源不足に陥る構造になっています。
補填は「制度の安定性」を損なう
地方消費税は、本来、地方が安定的に使える基幹税として設計されています。
これを毎年、国の裁量で交付金として補填する形に置き換えると、
地方財政の予見可能性が大きく低下します。
自治体は、
- 数年先を見据えた人員配置
- 保育所や介護施設の整備計画
- インフラの更新計画
を立てています。
補填が「その年限り」「毎年判断」となると、
長期計画を立てる前提そのものが崩れてしまいます。
「補填される前提」が自治体の自立性を弱める
補填が常態化すると、地方財政は国への依存度をさらに高めます。
地方消費税は、地方が自ら使途を判断できる一般財源ですが、
交付金による補填は、制度設計次第で条件付きになる可能性があります。
その結果、
- 国の方針に左右されやすくなる
- 地域の実情に合わせた施策が打ちにくくなる
といった問題が生じます。
地方分権の流れとも逆行する形になります。
補填しても「痛み」は避けられない
仮に国が形式的に全額を補填したとしても、
その原資が国債であれば、将来世代への負担に置き換わるだけです。
また、補填の仕組みが複雑になれば、
事務負担の増加や、交付の遅れによる資金繰りの問題も起こり得ます。
「補填=無傷」ではなく、
どこかに必ず別の形の負担が生じるのが現実です。
結論
「国が補填すれば解決」という考え方は、短期的には成り立ちます。
しかし、恒久的な消費税減税を前提とした場合、
財源、制度の安定性、地方の自立性という点で、多くの課題を抱えます。
消費税減税の是非を考える際には、
補填の有無だけでなく、
補填を前提とした財政運営が持続可能かどうか
という視点が欠かせません。
減税か、給付か、あるいは別の支援策か。
その選択は、国と地方の財政構造全体を見渡したうえで、
慎重に行われる必要があります。
参考
・日本経済新聞「食品消費税ゼロなら、地方税収2兆円減 保育・介護サービスに影響」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
