2025年12月2日より、マイナンバーカードを健康保険証として利用する「マイナ保険証」が原則化されます。従来の紙やプラスチックの保険証は12月1日に有効期限を迎えますが、厚生労働省は2026年3月末まで暫定的な利用を認めています。
今回の原則化は、医療DXを進める上での大きな転換点です。診療情報の共有が進むことで、重複投薬の防止や救急現場での迅速な対応などが期待されます。本稿では、制度のポイント、利用者へのメリット、そして今後の課題を整理します。
1 マイナ保険証が原則化される背景
政府は医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として、医療・介護の情報基盤整備を進めています。患者情報が医療機関ごとにバラバラに管理されている現状を改め、より適切な治療につなげることが狙いです。
その基盤となるのがマイナ保険証であり、2024年12月に従来型保険証の新規発行が停止。2025年12月以降は「加入先を問わず、マイナ保険証が原則」という姿に移行します。
一方で、カードを持っていない人や登録が済んでいない人もいるため、一定期間は従来型保険証を「資格確認書」として使用する暫定措置が設けられています。
2 利用者は何をすればよいか
マイナ保険証としての利用登録は、次の方法で簡単に行えます。
- マイナポータルからの登録
- セブン銀行ATMを利用した登録
- スマートフォンに搭載できる「スマホ保険証」の利用(2025年9月開始)
特に「スマホ保険証」はカードを持ち歩かずに利用できるため、普及が期待されています。2025年11月時点で、対応医療機関・薬局は約5万4000カ所となっています。
3 マイナ保険証で変わる医療の姿
最大の特徴は、医師や薬剤師が過去の受診歴や処方薬の情報を確認できる点です。これにより、以下のような効果が期待されます。
- 重複投薬の防止
- 薬の飲み合わせリスクの低減
- 診断・治療の質の向上
なお、過去の医療情報を共有するかどうかは本人の同意が前提であり、同意した場合に限り過去5年分のデータが閲覧されます。
4 高額療養費制度の簡素化・確定申告の効率化
マイナ保険証の利用によって、従来必要であった「限度額適用認定証」の取得が不要になり、高額療養費制度が事前手続きなしで適用されます。高額な医療費を一時的に立て替える必要がなくなる点は大きな利便性です。
また、医療費控除の申告では、e-Taxとマイナポータルの連携により、医療費データを自動入力できます。領収書を保管し、後で整理する手間が大幅に減ります。
5 救急医療での活用「マイナ救急」
消防庁は2025年10月から、救急隊員がマイナ保険証を利用して既往歴や服薬状況を確認できる「マイナ救急」の全国実証を開始しました。実際に命を救う判断に活かされた事例も報告されており、今後の普及が期待されます。
6 データの二次利用と研究開発の促進
個人が特定されない形でのデータ提供により、製薬会社などの研究開発が促進される側面もあります。医薬品開発や医療技術の向上に資するデータとして、社会的価値も大きいと言えます。
7 普及の課題
2025年10月時点で登録率は約88%に達しているものの、医療機関での実際の利用率は約37%。利用率の低さは今後の課題として残ります。
利用機会の創出や操作に不慣れな高齢者への支援、医療機関側の導入体制の整備など、移行期ならではの課題も存在します。
結論
マイナ保険証の原則化は、医療DXの大きな一歩です。重複投薬の防止、高額療養費制度の簡素化、救急医療での活用など、患者にとってのメリットは確実に広がります。
一方で、利用率向上やシステム面の課題、高齢者への支援など、現場での丁寧な対応が欠かせません。利用者・医療機関・行政がともに取り組むことで、安全で効率的な医療の未来が一層近づいていくといえます。
出典
日本経済新聞「12月2日 マイナ保険証利用原則に(2025年11月30日朝刊)」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
