医療費の増加と現役世代の保険料負担の重さは、社会保障制度全体の大きな課題となっています。こうした中、政府は市販薬と成分や効果が似ている医療用医薬品、いわゆる「OTC類似薬」について、保険適用は維持しつつも患者に追加の自己負担を求める制度を導入する方針を示しました。
本稿では、OTC類似薬の追加負担制度の内容と背景、家計や医療現場に与える影響について整理します。
OTC類似薬とは何か
OTC類似薬とは、医療機関で処方される医療用医薬品のうち、市販薬(OTC医薬品)と成分や効能・効果がほぼ同じものを指します。
代表例として、保湿剤のヒルドイド、抗アレルギー薬のアレグラ錠、解熱鎮痛薬、胃腸薬、湿布薬などが挙げられます。これらは比較的軽症の症状に用いられることが多く、市販薬でも代替が可能とされてきました。
新たな追加負担制度の仕組み
今回導入が予定されている制度では、OTC類似薬を保険適用から外すのではなく、「追加負担」という形で患者負担を引き上げます。
対象は当初、77成分・約1100品目とされ、薬剤費の4分の1を患者が全額負担し、残りの費用に対して従来どおり健康保険を適用します。その結果、患者は通常の1~3割負担に加え、一定の追加負担を負うことになります。
制度導入の背景
制度導入の最大の狙いは、医療費の抑制です。
市販薬で対応可能な症状については、医療機関受診や処方薬の使用を減らし、市販薬の活用を促すことで、医療保険財政の負担を軽減しようとしています。
与党内では、OTC類似薬を全面的に保険適用から外すことで年1兆円規模の医療費削減が可能との意見もありましたが、医療現場や患者への影響が大きいとして、最終的には追加負担方式に落ち着きました。
医療現場と患者への影響
一方で、この制度には慎重な意見もあります。
医師会などは、市販薬の使用に関する理解が十分でないまま自己判断で服用が広がれば、症状の悪化や副作用のリスクが高まる可能性を指摘しています。
政府は、子どもや慢性疾患の患者については配慮措置を検討するとしており、一律の負担増にならないよう制度設計が進められています。
今後の見通し
政府は2026年の通常国会に関連法案を提出し、2027年3月の実施を目指しています。
また、対象品目の拡大や負担割合の引き上げについては、2027年度以降に改めて検討される予定です。ただし、他の施策と合わせても医療費削減効果は年1880億円程度にとどまるとされ、制度の実効性については今後も議論が続くとみられます。
結論
OTC類似薬の追加負担制度は、医療費抑制と保険料負担軽減を目的とした現実的な折衷案といえます。一方で、家計への影響や医療の質、安全性への配慮が欠かせません。
制度の本格実施に向けて、対象者への丁寧な説明と、市販薬の適切な利用を支える情報提供が重要になっていくと考えられます。
参考
・日本経済新聞「OTC類似薬 1100品目で追加負担」(2025年12月27日朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
