2026年は干支で「うま年」にあたります。日本経済新聞では、今年の経済テーマを HORSE という5つのキーワードで整理していました。
覇権、過熱、再調整、サナエノミクス、選挙。いずれも2026年の経済運営を左右する重要な視点です。
この記事では、これらのテーマを整理しながら、日本経済が直面するリスクとチャンスを考察します。
H:Hegemony(覇権)
米中の対立は長期化しつつも、足元では「一定の休戦」を思わせる動きがみられます。
貿易・安全保障をめぐる火種を抱えながらも、両国が主導して国際秩序を形づくる局面が増える可能性があります。
こうした状況下で日本は、米国の同盟国としての関係を維持しつつ、中国との経済依存をどう調整するかが難しい課題となります。特に台湾海峡情勢を背景とした「対日経済圧力」は、日本企業にとって大きなリスクになり得ます。
日本の外交・経済政策は、これまで以上に緻密なバランス感覚が求められます。
O:Overheat(過熱)
世界的な温暖化の進行は、経済活動の季節性を変え、エネルギー・インフラの負荷を高めています。しかし2026年に向けてより警戒すべきは、株価の過熱 です。
米国の株式市場はAI関連銘柄を中心に上昇を続け、日本株も高値圏で推移しています。資産価格が高騰する一方、実体経済との乖離も広がりやすく、ショックが生じた場合の影響は大きくなります。
資産市場の過熱は、政府の政策判断だけでなく、家計の投資行動にも影響を及ぼしていきます。
R:Rebalance(再調整)
現在の株価上昇を支える最大テーマは生成AIです。しかしAI関連企業は、研究開発やデータセンター整備に伴う巨額の負債を抱えています。
生成AIの進化がもたらす成長期待は非常に大きい一方で、
「その投資を中長期で回収できるのか」
という評価の再調整が、一気に進む局面が訪れるかもしれません。
この再調整が急激に生じると、世界的な株価調整につながる可能性があります。「AIバブルの持続性」は2026年の大きな焦点となります。
S:Sanaenomics(サナエノミクス)
新政権は「責任ある積極財政」を掲げ、2025年度補正予算は前年度より規模が大きくなりました。ただし長期金利の上昇が続くなかで、財政拡大を続ける政策が市場心理にどう作用するかは慎重に見極める必要があります。
長期金利上昇を「財政リスク」と結びつける声もありますが、名目成長率の上昇とともに自然な金利上昇が生じている面もあります。名目成長率が長期金利を上回れば、債務のGDP比は安定しやすく、財政運営には一定の柔軟性が生まれます。
政策効果をどう定量的に示していくかが、政権運営の鍵になります。
E:Election(選挙)
2026年11月には米国の中間選挙が予定されています。AI規制、対中政策、財政支出の方向などが大きく変わる可能性があり、世界経済にも波及します。
日本でも政局は不透明さを増し、解散総選挙の可能性が取り沙汰されています。市場にとっては「政策の継続性」が最も重要であり、政治イベントの影響は軽視できません。
米国のAI関連債務が急激に調整した場合には、株価下落を通じて政権運営が大きな制約を受ける可能性があります。
経済成長と財政の両立のカギ
IMFは日本の政府債務のGDP比が「2026年に向けて安定的に低下する」との見通しを示しています。
名目成長率が3%程度で推移し、長期金利が2%程度であれば、財政赤字の拡大を抑えることができます。
2025年7〜9月期の名目GDPは665兆円と過去最高水準に達し、前年同期比で26兆円増加しました。
この経済規模の拡大が維持されれば、財政健全化と成長の両立は現実味を帯びてきます。
2026年は、成長力の底上げと財政運営の信頼性が試される1年になります。
結論
HORSEの5つのキーワードは、それぞれ独立したテーマでありながら、相互に密接に関わっています。覇権構造の変化、株価の過熱、AI投資の再評価、積極財政の成否、そして選挙による政策の揺らぎ。
2026年の日本経済は、これらの複合的な変化の中で、リスクとチャンスが交錯する局面を迎えます。
名目成長率が堅調に維持されるか、政策の継続性が確保されるか、世界の市場がどの程度の調整を許容するか。
いずれも「政権の手綱さばき」が問われるテーマであり、日本の経済運営にとって重要な判断が続きます。
HORSEは単なる語呂合わせではなく、2026年を読み解く地図のような役割を果たします。今後の政策と市場動向から目を離せない1年になりそうです。
参考
・日本経済新聞「HORSEがテーマの経済」(2025年12月9日朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
