人件費・外注費・福利厚生費は、いずれも「人」に関わる経費です。
そのため金額が大きくなりやすく、税務調査では必ずといってよいほど確認されます。
特に、ひとり社長・小規模事業者では、
- 実務の都合
- 長年の慣行
- 何となくの判断
で処理が続いているケースも少なくありません。
本稿では、これまでのシリーズ内容を整理し、実務で使えるチェックリストとしてまとめます。
「人に関する経費」は3つの視点で見る
まず、すべてに共通する基本スタンスを確認します。
- 名称ではなく実態で判断する
- 税務署に説明できるかを基準にする
- 無理に有利な区分に寄せない
この3点を外さなければ、大きく判断を誤ることはありません。
人件費か外注費かを判断するチェックリスト
まず最も問題になりやすい、人件費と外注費の区分です。
人件費・外注費チェックリスト
- □ 仕事の進め方をこちらが細かく指示していない
- □ 勤務時間や出勤日を拘束していない
- □ 作業方法や手順に裁量がある
- □ 成果物や業務単位で報酬が決まっている
- □ 他の取引先の仕事もできる立場である
- □ 名称だけでなく、実態として独立性がある
「いいえ」が多い場合、外注費としての説明は難しくなります。
その場合は、人件費として整理するか、働き方自体の見直しが必要です。
外注費として処理する際の最終確認
外注費は否認されると影響が大きいため、特に慎重さが求められます。
外注費の実務確認ポイント
- □ 業務委託契約書があり、内容と実態が一致している
- □ 指揮命令関係がないことを説明できる
- □ 報酬が時間給・日給になっていない
- □ 長期間の専属状態になっていない
- □ なぜ雇用ではないのかを説明できる
曖昧な場合は、「外注で押し切る」よりも「安全側で整理する」判断が重要です。
福利厚生費として処理する際のチェックリスト
福利厚生費は、名前以上に厳しく実態が見られます。
福利厚生費チェックリスト
- □ 全従業員を対象としている
- □ 特定の人だけが利益を受けていない
- □ 内容・金額が社会通念上妥当である
- □ 私的な支出ではない
- □ 給与や交際費と区別できる理由がある
ひとり社長や家族経営の場合、
「形式的には全員対象」でも、実態として個人支出と見られやすい点に注意が必要です。
福利厚生費に寄せすぎない判断も重要
税務上有利だからといって、
- 給与性のある支出
- 交際性の強い支出
まで福利厚生費に寄せると、かえって不自然になります。
「これは福利厚生費にしない方が説明しやすい」
という判断も、実務では立派なリスク管理です。
実務で迷ったときの最終判断軸
どうしても判断に迷う場合は、次の問いを自分に投げかけてみてください。
- 第三者に説明して納得してもらえるか
- 税務調査の場で言葉に詰まらないか
- 事業規模として違和感はないか
この問いに自信を持って答えられない場合、
その処理は見直しの余地があります。
結論
人件費・外注費・福利厚生費の実務対応で最も重要なのは、
一貫した考え方と説明可能性です。
- 有利不利で区分しない
- 名称に頼らない
- 実態を冷静に見る
この姿勢を保っていれば、税務調査で過度に恐れる必要はありません。
本チェックリストは、「節税のため」ではなく、
安心して事業を続けるための判断基準として活用することが大切です。
参考
・法人税法(給与・外注費・福利厚生費関係)
・所得税法(源泉徴収関係)
・税のしるべ(税務調査関連記事)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
