今後の税制改正はどこに向かうのか― 令和8年度与党税制大綱「検討事項」から読み解く ―

税理士
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税制改正大綱というと、どうしても「来年度から何が変わるのか」に目が向きがちです。
しかし、実務や家計にとって本当に重要なのは、大綱の中に書かれている「今後の検討事項」です。ここには、次の税制改正で何が俎上に載るのかという政策の方向性が、はっきりと示されています。

令和8年度与党税制改正大綱では、交際費課税、租税特別措置の透明化、国外居住親族に係る扶養控除など、今後の見直しを前提とした論点が整理されました。本稿では、それぞれの検討項目が意味するものを読み解いていきます。

交際費課税は「再び見直しのテーブル」へ

交際費課税については、すでに令和6年度改正で一定の見直しが行われています。具体的には、損金不算入となる交際費等の範囲から除外される「一定の飲食費」について、1人当たり5,000円以下という基準が1万円以下へと引き上げられました。

一見すると、これで議論は一区切りついたようにも見えます。しかし、令和8年度与党大綱では、この措置の適用期限の到来に合わせ、令和9年度税制改正で改めて交際費課税のあり方を検討すると明記されています。

ポイントは、「冗費・濫費の抑制」という交際費課税本来の趣旨と、「会議費・飲食の実態」とのバランスです。物価上昇や働き方の変化により、従来の基準では実態と合わなくなっているとの問題意識が背景にあります。

一方で、交際費課税は企業行動に強く影響します。設備投資や賃上げを後押しする政策との整合性も問われるため、単なる緩和や厳格化ではなく、制度全体の再整理が行われる可能性があります。

租税特別措置の「適用企業名公表」という新たな論点

今回の大綱で、特に注目されるのが、租税特別措置の適用企業名の公表に関する検討です。

現在も、法人税関係の租税特別措置については、措置ごとの適用者数や適用総額、高額適用額などが公表されています。しかし、「どの企業が使っているのか」という情報までは原則として明らかにされていません。

これに対し、大綱では、補助金の交付先が原則公表されていることや、諸外国での制度例を踏まえ、「一層の透明化」を図る必要性が示されました。そして、企業の経営戦略への影響や事務負担にも配慮しつつ、令和9年度税制改正で結論を得るとされています。

自民党税制調査会の資料では、

  • 公表対象となる措置
  • 公表対象となる企業の範囲
  • 公表のスケジュール
  • 国が税務情報を公表する必要性と企業への影響のバランス
  • 国・企業双方の事務負担

といった具体的な論点が整理されています。

これは単なる情報開示の問題ではなく、税制が企業行動をどう誘導するのかという、制度設計そのものに関わるテーマだといえます。

国外居住親族に係る扶養控除の実効性検証

国外居住親族に係る扶養控除については、すでに令和2年度改正で一定の見直しが行われています。30歳以上70歳未満の成人親族については、留学生や障害者などを除き、原則として控除の対象外とされました。

今回の大綱では、この改正から3年が経過したことを踏まえ、実態調査を行い、その結果を基にさらなる適正化を検討するとされています。

ここで重要なのは、「制度を厳しくするかどうか」ではなく、「制度が想定どおり機能しているか」という視点です。形式的には要件を満たしていても、実質的に扶養の実態が乏しいケースが残っていないか、税務当局として検証を進める姿勢が示されています。

税制改正は「結果」より「方向性」を読む

令和8年度与党税制改正大綱の検討事項を見ていくと、いずれも共通しているのは、「すぐに結論を出さない」という姿勢です。実態調査や影響分析を行い、その上で令和9年度改正で結論を得るとされています。

これは、税制が短期的な調整ではなく、中長期的な制度設計として扱われていることを意味します。
交際費課税、租税特別措置、扶養控除のいずれも、今後の改正を考える上での「予告編」として位置づけることができます。

結論

税制改正大綱の「検討事項」は、将来の改正を占う重要な手がかりです。
令和8年度大綱では、企業行動の透明性、税制の実効性、そして実態との乖離というテーマが色濃く表れています。

来年度すぐに影響が出る話ではなくても、数年後には確実に制度の姿が変わっていく可能性があります。今後の税制改正を考える際には、こうした「方向性」に目を向けることが欠かせません。

参考

・税のしるべ「8年度与党大綱で示された今後の税制改正の方向性、交際費課税は9年度改正で見直しを検討」
・令和8年度 与党税制改正大綱
・自民党税制調査会 資料


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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