物価高への対応策として、食品にかかる消費税を時限的にゼロにする案が再び現実味を帯びています。衆院選後、与党は「2年間限定」の食品消費税ゼロを公約に掲げ、検討を進める方針を示しました。
一見すると家計を直接支える分かりやすい政策ですが、その実現には複数の制度的・実務的な課題が横たわっています。本稿では、食品消費税ゼロをめぐる議論の中でも特に重要な三つの論点を整理します。
1.最大の壁となる「代替財源」の問題
食品にかかる消費税収は、国と地方を合わせて年間約5兆円規模とされています。この税収は年金・医療・介護などの社会保障財源に充てられており、その約4割は地方自治体に配分される仕組みです。
食品消費税をゼロにすれば、この税収が一時的に失われます。その穴をどのように埋めるのかが、最大の論点です。
政府は赤字国債への依存を避ける姿勢を示しており、税外収入や補助金の見直し、租税特別措置の整理などが候補として挙げられています。ただし、5兆円規模の財源を短期間で安定的に確保するのは容易ではありません。
さらに、ガソリン税や軽油引取税の見直し、教育無償化、自動車関連税の軽減など、他の政策課題でも財源確保が追いついていない現状があります。食品消費税減税が加われば、財政運営全体への影響は一段と大きくなります。
2.レジ・システム改修という現場の負担
二つ目の論点は、実務面での対応です。
消費税率が変わる場合、スーパーやコンビニではPOSシステムの改修が必要となります。大手チェーンが導入しているシステムでは、改修に1年以上かかるとの指摘もあります。
また、システム改修だけでなく、店頭表示価格の変更、値札の貼り替え、会計処理の見直しなど、現場での作業負担も無視できません。特に中小の小売事業者にとっては、人手やコストの面で重い負担となります。
2年間限定の措置であれば、導入時と終了時の双方で対応が必要となり、事業者側の実務負担は二重になります。
3.外食産業との不均衡と影響
三つ目は、外食産業への影響です。
現在の制度では、スーパーの食品やコンビニ弁当などの「中食」は軽減税率8%、外食は標準税率10%が適用されています。食品消費税がゼロになれば、中食と外食の税率差はさらに拡大します。
その結果、外食は相対的に割高に見え、消費者の行動が変わる可能性があります。外食産業では、売上減少や価格転嫁の難しさが懸念されています。
外食業界の団体は、減税を行うのであれば外食も対象に含めるよう求めていますが、対象を広げれば税収減はさらに拡大します。また、外食支出が多い層ほど恩恵を受けやすい点から、政策効果の公平性を疑問視する声もあります。
補足論点:小規模事業者・農家への影響
食品消費税ゼロは、必ずしも全ての関係者にプラスとなるわけではありません。
消費税の免税事業者である小規模農家などは、これまで販売価格に含まれていた消費税相当額を事実上の収入として受け取ってきました。税率がゼロになれば、その分が失われ、収益が悪化する可能性があります。
減税政策が特定の層にとっては逆風となり得る点も、冷静に見ておく必要があります。
結論
食品消費税ゼロは、家計支援として分かりやすい政策である一方、財源、実務、産業間の公平性といった複雑な課題を抱えています。
短期的な負担軽減効果だけでなく、制度運営や現場への影響、将来的な税制の持続可能性まで含めた議論が欠かせません。消費税は社会保障と密接に結びついた税であるからこそ、「下げるか、下げないか」だけでなく、「どう設計し、どう戻すのか」まで含めた検討が求められています。
参考
・日本経済新聞「消費減税、3つの論点」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

