暗号資産に関する税制は、これまで「分かりにくい」「使いにくい」という指摘が多くありました。
とくに個人にとっては、利益が出た年だけ税負担が重くなり、損失が出た年には救済がないという点が、制度上の大きな特徴でした。
2026年度税制改正大綱では、この暗号資産課税について、制度の前提を大きく見直す改正が盛り込まれています。
本稿では、暗号資産課税がどのように変わるのか、その意味を整理します。
これまでの暗号資産課税の位置づけ
これまで、個人が暗号資産を売却したり、他の暗号資産と交換したりした場合の所得は、原則として雑所得に区分されてきました。
雑所得は、他の所得と合算して課税される総合課税であり、所得が増えるほど税率が高くなります。
また、暗号資産取引で生じた損失については、原則として他の所得と損益通算することも、翌年以降に繰り越すこともできませんでした。
この点が、株式や投資信託などの金融商品との大きな違いでした。
分離課税への転換
今回の改正では、一定の暗号資産取引について、他の所得と切り離して課税する分離課税が導入されます。
税率は、所得税と個人住民税を合わせて20%とされており、株式等の譲渡所得と同水準です。
これは、暗号資産を投機的な例外的存在として扱うのではなく、金融商品に近い位置づけで整理する方向へ転換したことを意味します。
税率の上限が明確になることで、取引による税負担の見通しが立てやすくなります。
損失繰越控除の導入
今回の改正で重要なのが、暗号資産取引に係る損失について、一定期間の繰越控除が認められる点です。
これにより、ある年に生じた損失を、翌年以降の暗号資産取引による所得から差し引くことが可能になります。
この仕組みは、価格変動が大きい暗号資産の特性を踏まえたものといえます。
短期的な結果だけで税負担が確定するのではなく、一定期間で通算する考え方が導入された点は、大きな変更です。
デリバティブ取引への対応
暗号資産に関連する取引は、現物の売買にとどまりません。
先物取引や差金決済取引など、いわゆるデリバティブ取引も広がっています。
今回の改正では、こうした暗号資産デリバティブ取引についても、分離課税や損失繰越の対象に含める整理が行われています。
取引形態の違いによって税制が大きく分かれる状況を是正する狙いがあると考えられます。
取引情報の把握と実務への影響
制度の見直しとあわせて、暗号資産取引に関する情報の把握も強化されます。
暗号資産取引を取り扱う事業者は、取引情報を税務当局に報告する仕組みが整備される予定です。
これにより、申告漏れや計算誤りが発覚しやすくなる一方で、正しく申告している人にとっては、制度の透明性が高まることになります。
暗号資産課税が、より一般的な金融課税の枠組みに近づいたといえます。
結論
2026年度税制改正大綱における暗号資産課税の見直しは、制度の一部修正ではなく、考え方そのものの転換です。
分離課税と損失繰越の導入により、暗号資産は「例外的な雑所得」から、「一定のルールの下で管理される金融取引」へと位置づけが変わりました。
一方で、課税が明確になるということは、申告の重要性も高まることを意味します。
今後は、取引記録の管理や税制理解が、これまで以上に欠かせないものとなるでしょう。
次回は、企業や個人事業者にも関係する、設備投資・研究開発・賃上げ促進税制の見直しについて整理します。
参考
・財務省「令和8年度税制改正大綱(令和7年12月26日 閣議決定)」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
