住宅ローン控除が「取得時」の税制であるのに対し、不動産・土地税制は「売却」や「建替え」、「再生」といった局面で影響が表れます。
2026年度税制改正大綱では、こうした不動産・土地に関する税制について、延長と見直しが同時に行われています。
一見すると専門的な改正に見えますが、実際には自宅の売却、相続後の土地処分、老朽マンションの建替えなど、個人にも関係する場面が少なくありません。
本稿では、今回の改正のうち、個人の判断に影響しやすいポイントを中心に整理します。
不動産税制に共通する今回の方向性
今回の不動産・土地税制を通して見えてくる共通点は、「延長しつつ、無条件では認めない」という姿勢です。
これまで継続されてきた各種特例は、多くが期限延長されていますが、その一方で、適用対象の整理や除外要件の追加が行われています。
つまり、従来どおりの感覚で適用できるとは限らず、
「どのような土地・建物か」
「どのような事業・再生に使われるのか」
といった点が、これまで以上に重視されるようになっています。
土地等を売却した場合の譲渡特例の見直し
優良住宅地の造成等を目的とした土地の譲渡については、長期譲渡所得の課税特例が引き続き設けられています。
ただし、今回の改正では、建築費単価の上限要件が引き上げられるなど、現実の建築コスト上昇を反映した見直しが行われています。
一方で、災害リスクの高い区域に存する土地については、一定の場合に特例の適用対象外とされる仕組みが導入されています。
単に「住宅用地として使われる」だけでは足りず、立地や安全性も含めて評価される方向へと進んでいます。
マンション建替え・再生に関する改正
今回の改正の中で分量が多いのが、マンションの建替えや再生に関する税制です。
老朽化したマンションの増加を背景に、建替えや敷地売却、再生事業を進めやすくするための税制上の整理が行われています。
具体的には、
・マンション建替事業
・マンション再生事業
・敷地売却事業
といった枠組みについて、適用対象や要件が再整理されています。
個人の区分所有者にとっては、
「どの事業スキームに該当するのか」
「自分の土地や持分の譲渡がどの特例の対象になるのか」
を正確に把握しないと、想定していた税務上の扱いと異なる結果になる可能性があります。
居住用財産の譲渡損失や低未利用土地の特例
居住用財産を売却した際の譲渡損失の繰越控除や、低未利用土地の譲渡に関する特例についても、適用期限の延長が行われています。
これらは、相続後に使われていない土地を処分する場合などに、実務上よく問題となる制度です。
もっとも、今回の改正では、適用対象となる土地や建物の範囲について、一定の見直しが加えられています。
制度が残っているからといって、無条件に使えるわけではなく、事前の確認が欠かせません。
個人が注意すべき実務上のポイント
不動産・土地税制の改正は、実際に売却や建替えが決まってから知っても、対応が難しいことが少なくありません。
とくに、契約や事業計画が先行してしまうと、後から税制要件を満たさないことが判明するケースもあります。
今回の改正を踏まえると、
・売却や建替えを検討する段階で制度を確認する
・「従来どおり使える」と思い込まない
という姿勢が、これまで以上に重要になっています。
結論
2026年度税制改正大綱における不動産・土地税制の見直しは、特例の延長と同時に、政策目的に沿った選別を進める内容となっています。
安全性、居住環境、再生の実効性といった観点が、税制の適用にも反映されるようになってきました。
不動産は一度の判断が長期的な影響を持つ分野です。
売却や建替えを考える際には、税制が「後からついてくるもの」ではなく、「事前に織り込む前提条件」になりつつあることを意識しておく必要があります。
次回は、金融・証券税制の見直し、とくにNISAの制度変更を中心に整理します。
参考
・財務省「令和8年度税制改正大綱(令和7年12月26日 閣議決定)」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
