衆院選での自民党大勝を受け、政府は「責任ある積極財政」を掲げ、経済運営の舵を切ろうとしています。とりわけ注目を集めているのが、食料品にかかる消費税率を2年間ゼロとする構想です。
生活支援としてのわかりやすさがある一方で、財源や将来の財政運営をどう説明するのかという点では、多くの課題を残しています。本稿では、積極財政と消費税減税をめぐる論点を整理し、「市場の信認」という視点から考えてみます。
「責任ある積極財政」とは何か
政府が掲げる積極財政は、単なる歳出拡大ではなく、成長分野への戦略的投資を通じて経済の成長力を高め、その結果として財政の持続可能性も確保しようとする考え方です。
AI、半導体、バイオなどへの重点投資は、官主導で成長を後押しする姿勢を明確にしています。ただし、これらの投資が本当に中長期の成長につながるかどうかは、成果が見えるまで時間を要します。
食料品の消費税ゼロがもたらす影響
食料品の消費税率をゼロにすれば、家計への即効性は高いと考えられます。一方で、国と地方を合わせて年間約5兆円の税収減になるとされています。
消費税は、年金・医療・介護・子育てといった社会保障の主要な財源です。減税を行う以上、代替財源をどこに求めるのかが避けて通れません。
財源論が曖昧なままの減税リスク
首相は、減税の財源について赤字国債に頼らないとし、補助金や租税特別措置の見直し、税外収入などを挙げています。しかし、現時点では具体的な金額や持続性が示されていません。
外為特会の剰余金など、単年度で活用できる財源はあっても、恒久的な財源とは言い難いのが実情です。この点が、市場から不安視される理由の一つとなっています。
「2年限定」という約束の難しさ
今回の減税は、給付付き税額控除の導入までの経過措置として、2年限定とされています。しかし、減税は一度実施すると、元に戻す際の政治的ハードルが高くなります。
2年後に税率を戻すことは、実質的な増税と受け取られる可能性があり、選挙日程とも重なる中で、当初の約束通りに進められるかは不透明です。
市場の信認とGDP比の落とし穴
政府は、債務残高のGDP比を重視し、市場の信認を確保するとしています。足元ではインフレにより名目GDPが伸び、比率は低下しています。
ただし、これは一時的な要因による面が大きく、数年後には金利上昇による利払い費の増加が表面化してきます。構造的な財政改善が伴わなければ、状況は再び厳しくなります。
本当に問われるのは「成長の中身」
積極財政が評価されるかどうかは、投じた財源がどれだけ成長力の向上につながるかにかかっています。官主導の投資が成果を上げなければ、財政拡大だけが残り、市場の信認を損なうリスクが高まります。
単に減税や支出拡大を行うのではなく、その後の出口戦略をどこまで具体的に示せるかが重要です。
結論
消費税減税と積極財政は、国民生活を支える有効な手段となり得ますが、同時に財源と将来像を丁寧に説明しなければ、市場の信認を揺るがしかねません。
短期的な支援策と中長期的な財政運営をどう両立させるのか。今後の議論では、「やるかやらないか」ではなく、「どう持続させるか」が問われていくことになります。
参考
・日本経済新聞「積極財政、課題なお多く 消費減税に財源の壁 自民大勝、市場の信認試す」(2026年2月9日朝刊)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
