衆院選の論戦において、物価高対策が主要な争点となる中、消費税、とりわけ飲食料品の税率引下げについて、首相の発信が抑えられている点が注目されています。
本稿では、選挙期間中に消費税が前面に出てこない背景を整理し、その意味を財政・市場・政治の三つの視点から考察します。
消費税減税を語らない選挙戦
首相は公示後の街頭演説において、飲食料品の消費税率引下げに直接言及していません。
公約上は「超党派の国民会議で実現に向けた検討を加速する」と明記されているものの、選挙戦ではもっぱら補正予算による物価高対策の実績が強調されています。
公示前には、食料品の消費税率ゼロについて強い問題意識を示していただけに、この姿勢の変化は意図的なものとみるのが自然でしょう。
「責任ある積極財政」と消費税の距離感
首相の掲げる「責任ある積極財政」は、単なる歳出拡大ではなく、財政の持続可能性との両立を前提としています。
選挙期間中の演説でも、無駄の削減やメリハリある投資といった表現が繰り返され、税収減を伴う政策への直接的な言及は控えられています。
消費税は基幹税であり、減税は中長期の財政収支に影響を与えます。そのため、選挙戦という短期的な場面で前面に出すことは、「積極財政」のイメージと必ずしも整合しない側面があります。
市場が注視する「発言そのもの」
興味深いのは、首相の発信姿勢と国債市場の落ち着きが同時に語られている点です。
長期国債の利回りは、衆院解散直後に記録した水準から低下しており、市場関係者の間では、選挙期間中に消費税減税への言及を控えていることが、金利上昇を抑えているとの見方も出ています。
ここで重要なのは、政策の実行以前に、「発言」そのものが市場に影響を与えるという現実です。
消費税減税は、実施時期や財源が不透明な段階でも、財政規律への懸念として織り込まれやすいテーマだといえます。
首相の持論と党内の温度差
首相自身は、かねて食料品の消費税率ゼロに前向きな発言をしてきました。
しかし、党内には財政規律を重視する慎重論も根強く、候補者アンケートでも一定割合が税率維持を支持しています。
選挙期間中に消費税を語らない背景には、市場だけでなく、党内の意見集約という現実的な判断もあると考えられます。
野党・他党との対比が生む構図
一方、連立政権を組む政党や他党は、飲食料品の消費税率ゼロを明確な公約として掲げ、物価高対策の即効性を強調しています。
その結果、消費税は「語られない与党」と「語る野党」という構図で浮かび上がる争点となっています。
この対比は、有権者にとって選択を分かりやすくする一方で、消費税が本来持つ制度的・財政的な論点が十分に共有されないまま議論が進むリスクも含んでいます。
結論
今回の衆院選において、消費税が正面から語られていないことは、単なる戦術ではなく、
・市場への配慮
・財政規律とのバランス
・党内調整
といった複数の制約条件の上に成り立つ判断だといえます。
消費税は、選挙向けのキャッチコピーだけで扱えるテーマではありません。
選挙後、どのような形で議論が再開され、具体的な制度設計に落とし込まれるのか。
本当の意味での論戦は、むしろ投票日以降に始まるのかもしれません。
参考
・日本経済新聞
「首相、消費税発信抑える 衆院選論戦」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

