税収は景気や消費動向を映す鏡といわれますが、2025年末の酒税は、景気とは異なる要因で大きく落ち込みました。
2カ月連続で前年同月比2割前後の減少となり、その背景として指摘されているのが、民間企業へのサイバー攻撃です。
本稿では、酒税の仕組みを確認したうえで、なぜ一企業のシステム障害が国の税収にまで影響したのかを整理します。
酒税は「出荷時点」で課税される税金
酒税は、消費者が購入した時点ではなく、酒類が工場から出荷された時点で課税されます。
納税義務者は酒類メーカーであり、出荷量がそのまま課税数量になります。
この仕組みにより、
・出荷が止まれば税金は発生しない
・販売が後日回復しても、出荷が遅れた月の税収は落ち込む
という特徴があります。
サイバー攻撃による出荷停止の影響
2025年9月末、大手ビールメーカーでサイバー攻撃によるシステム障害が発生しました。
これにより、ビールを中心とした製品の受注・出荷が一時的に停止し、正常化したのは12月上旬とされています。
酒税は出荷月ベースで計上されるため、
・10月出荷分 → 12月税収に反映
というタイムラグが生じました。
その結果、
・2025年12月の酒税は前年同月比18.5%減
・11月も23.6%減
と、2カ月連続で大幅な減少となりました。
特に影響が大きかった「ビール」
酒類別に見ると、影響が最も大きかったのはビールです。
ビールは酒税収入の中で最大の割合を占めており、直近では全体の約4割を占めていました。
2025年10月の課税対象数量では、
・酒類全体:前年同月比16.9%減
・ビール:同32.0%減
と、ビールの落ち込みが突出しています。
この構造から、ビール出荷の停滞は、そのまま酒税全体を大きく押し下げる結果となりました。
税収全体では「異例の構図」
興味深いのは、酒税が大きく減る一方で、他の主要税目は堅調だった点です。
同じ月の税収では、
・所得税:賃上げを背景に増加
・法人税:企業業績拡大で増加
・消費税:前年並み
と、全体としては増収基調でした。
つまり、
景気が悪くて酒税が減ったのではなく、供給側のシステム障害によって税収が落ちた
という、極めて例外的な構図だったといえます。
税務・経理の視点で見た示唆
今回の事例は、税務や経理の実務においても重要な示唆を与えます。
・税金は「取引の実態」だけでなく「処理のタイミング」に強く依存する
・システム障害や業務停止は、売上だけでなく税務にも影響する
・サイバーリスクは、企業内部の問題にとどまらず、社会全体に波及する
特に、出荷基準・計上基準で課税される税目については、業務フローと税務の関係を平時から整理しておく重要性が改めて浮き彫りになりました。
結論
今回の酒税減少は、消費の低迷ではなく、サイバー攻撃という突発的なリスクが引き金となったものです。
税収は経済活動の結果であると同時に、企業活動の安定性にも左右されます。
税務を考えるうえでは、数字の増減だけでなく、
「なぜその税収になったのか」
という背景を読み解く視点が、これまで以上に重要になっているといえるでしょう。
参考
・日本経済新聞「サイバー攻撃、酒税に打撃」
・財務省「国税収入状況」
・国税庁「酒税の概要」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
