食料品の消費税ゼロが議論される一方で、免税事業者には別の悩みがあります。
それは、このタイミングで課税事業者を選ぶべきかどうかです。
インボイス制度が始まり、取引環境が変わった今、この判断は単なる税金の多寡では済みません。
結論から言えば、答えは一つではなく、事業内容と取引構造次第です。
免税事業者でいる最大のメリット
免税事業者でいる最大の利点は、やはり消費税を納めなくてよい点です。
- 売上に消費税を上乗せして受け取れる
- 申告・納税事務が不要
- 資金繰りが安定しやすい
特に、
- 一般消費者向けの商売
- 小規模飲食店
- 価格競争が激しくない業種
では、免税のメリットは今も有効です。
課税事業者を選ぶ理由① 取引先からの要請
インボイス制度下では、
取引先が課税事業者かどうかを重視するケースが増えています。
BtoB取引が中心の場合、
- 「インボイスを発行できないと困る」
- 「仕入税額控除ができない」
といった理由で、免税事業者との取引を見直す動きが出ます。
この場合、
売上を守るために課税事業者を選ぶ
という判断は、十分に合理的です。
課税事業者を選ぶ理由② 消費税ゼロが「免税取引」になる場合
食料品の消費税ゼロが、仮に免税取引として設計された場合、
課税事業者は仕入税額控除を引き続き受けられます。
その結果、
- 原価構造が軽くなる
- 値下げや利益確保の余地が生まれる
一方、免税事業者は控除を受けられません。
この差が拡大すれば、
課税事業者の方が経営上有利になる可能性もあります。
この論点については、玉木雄一郎氏も問題提起しています。
課税事業者を選ぶ理由③ 補助金・制度対応のしやすさ
実務上、見落とされがちなのが制度対応力です。
- 補助金・助成金の申請
- 行政・大企業との取引
- 会計・税務の透明性
これらは、課税事業者の方が有利になる場面があります。
将来的な事業拡大を考えている場合、
早めに課税事業者へ移行するという選択肢もあります。
課税事業者を選ばない方がよいケース
一方で、次のような場合は、無理に課税事業者を選ぶ必要はありません。
- 取引先が一般消費者のみ
- 売上規模が小さく、今後も急拡大の予定がない
- 価格競争が激しく、値上げができない
- 消費税分を自社負担せざるを得ない
この場合、
課税事業者になることで
「税金を払うだけで利益が減る」
結果になりかねません。
判断を誤りやすいポイント
免税事業者が陥りやすい誤解は次の点です。
- 「みんな課税事業者になるから」
- 「消費税ゼロになるなら課税の方が得そう」
- 「税理士に勧められたから」
本来、この判断は
売上先・仕入先・価格転嫁力
を整理しないとできません。
一度課税事業者を選ぶと、
原則として一定期間は免税に戻れない点にも注意が必要です。
判断のためのチェックリスト
免税事業者が課税事業者を検討する際は、次の点を確認しましょう。
- 売上の何割がBtoBか
- 取引先からインボイスを求められているか
- 消費税分を価格に転嫁できるか
- 仕入・経費にかかる消費税はどれくらいか
- 今後、売上拡大や法人化の予定があるか
これらを整理すると、判断はかなり明確になります。
結論
免税事業者が今、課税事業者を選ぶべきかどうかは、
「税率」ではなく「取引構造」で決まります。
- 取引先を守るなら課税
- 小規模・消費者向けなら免税維持
- 制度設計次第で有利不利は変わる
重要なのは、
「制度がどうなるか」よりも
自分の事業にどう影響するかを冷静に見極めることです。
消費税ゼロの議論は、
免税事業者にとって、
自社の立ち位置を見直す良い機会でもあります。
参考
・日本経済新聞「〈checkpoint〉食料品は8%安くなるのか?」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。
