物価高対策として、与野党から「食料品の消費税率をゼロにする」という提案が相次いでいます。
一見すると、スーパーの食料品価格がそのまま8%下がるように思えますが、実際には「きれいに8%分下がる可能性は低い」との見方が専門家の間で広がっています。
なぜ、消費税がゼロになっても価格は8%下がらないのでしょうか。
消費税は「事業者が分担して納める税金」
消費税は、最終的に消費者が負担しますが、納税の仕組みは単純ではありません。
事業者は、売上にかかる消費税から、仕入れなどで支払った消費税を差し引いて納税します。
例えば、税込216円の飲料を販売した場合、消費者は16円の消費税を支払います。
しかし、事業者がその16円すべてを国に納めるわけではありません。
仕入れにかかる消費税を控除した残額だけを納税します。
このように、消費税はメーカー・卸売・小売といった流通の各段階で分担される仕組みになっています。
すべての事業者が8%下げるとは限らない
重要なのは、価格を決めるのは各事業者であるという点です。
消費税がゼロになったからといって、原材料メーカーから小売店まで、すべての事業者が一律に8%値下げする義務はありません。
特に食品業界では、次のようなコストが価格に影響します。
- 原材料費
- 包装資材費
- 人件費
- 店舗の賃借料
- 光熱費や物流コスト
仮に、消費税を納めなくて済む分が生じても、
「人件費やその他の経費の上昇分に充てたい」
と考える事業者がいれば、その分、値下げ幅は小さくなります。
「現金収入が減る」ことへの心理的抵抗
減税により、最終的な利益が変わらなくても、値下げをすると一時的に売上高が減ります。
これは、資金繰りや業績評価を気にする事業者にとっては無視できない要素です。
短期的なキャッシュフローの悪化を嫌い、
「価格はあまり下げたくない」
という判断が働く可能性もあります。
ドイツでは減税分の7割しか下がらなかった
実際の海外事例を見ると、価格転嫁の難しさが分かります。
ドイツでは、新型コロナウイルス対応として、付加価値税(VAT)を一時的に引き下げました。
その結果、研究機関の分析では、
スーパーの店頭価格の下げ幅は、減税分の約7割にとどまった
と報告されています。
また、税率を元に戻した際には、価格が完全には戻らないケースも確認されました。
これは、消費者にとっては恩恵が残る一方、事業者にとっては再値上げが難しくなるリスクを意味します。
非課税か免税かで「下げ余地」は変わる
消費税ゼロを導入する際の制度設計も、価格に影響します。
特に議論されているのが、非課税取引にするのか、免税取引にするのかという点です。
公開の場で、玉木雄一郎氏が問題提起しているように、
免税取引の場合は、仕入れにかかる消費税の控除をより多く受けられる可能性があります。
その結果、事業者の手元に値下げ原資が残りやすくなり、
店頭価格の下げ余地が広がる可能性もあります。
結論
食料品の消費税がゼロになっても、
価格がそのまま8%下がるとは限りません。
理由は、
- 消費税が流通全体で分担される仕組みであること
- 各事業者が独自に価格を決めていること
- 人件費や固定費など、税以外のコストが大きいこと
- 制度設計によって値下げ余地が変わること
にあります。
消費税減税は、確かに消費者支援策の一つですが、
「どれくらい安くなるのか」は、制度設計と現場の判断次第です。
数字だけで期待するのではなく、仕組みを理解したうえで議論することが重要だといえるでしょう。
参考
・日本経済新聞「〈checkpoint〉食料品は8%安くなるのか?」
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

