地方拠点強化税制が拡充へ― 中古資産も対象に、雇用促進税制は一本化 ―

税理士
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令和8年度税制改正大綱では、企業の地方移転・地方拠点整備を後押しする「地方拠点強化税制」について、制度の拡充と適用期限の延長が盛り込まれました。
今回の改正の特徴は、中古資産の取得や改修が新たに対象に加えられた点と、雇用促進税制を廃止し、いわゆるオフィス減税に一本化した点にあります。
本記事では、地方拠点強化税制の基本を確認したうえで、令和8年度改正のポイントと実務上の留意点を整理します。

地方拠点強化税制の基本構造

地方拠点強化税制は、企業が本社機能の一部または全部を地方に移転・拡充する場合に、税制上の支援を行う制度です。
対象となる本社機能とは、管理部門や調査企画部門、研究開発部門、研修所など、企業の中枢的な機能を担う部門を指します。

制度上は、大きく次の二つの類型に分かれています。
一つ目は、東京23区から地方へ本社機能を移転する「移転型」。
二つ目は、地方で本社機能を拡充する場合や、東京23区以外から地方へ移転する「拡充型」です。

これらに該当する場合、一定の要件のもとで「オフィス減税」や、これまで設けられていた「雇用促進税制」の適用を受けることができました。

オフィス減税の内容と対象施設

オフィス減税は、地方において本社機能を有する施設を新設または増設した場合に、建物や附属設備の取得価額に応じて、特別償却または税額控除を認める制度です。

対象となる特定業務施設は、事務所、研究所、研修所であり、工場や店舗は含まれません。
また、これらの施設の新設等と併せて整備される子育て施設も対象とされています。

事務所については、調査・企画部門、情報処理部門、研究開発部門、国際事業部門、管理業務部門など、使用目的が細かく定義されており、単なる営業拠点や支店とは区別されています。

令和8年度改正の最大のポイント

今回の改正で最も注目されるのが、対象資産の範囲が拡大された点です。
従来は新設・新築が前提となっていましたが、令和8年度改正では、中古資産の購入や、その改修も対象に追加されました。

これにより、既存のオフィスビルや遊休不動産を活用した地方拠点整備がしやすくなります。
新築に比べて初期投資を抑えやすく、地方都市の実情にも合った制度設計へと一歩踏み込んだ形といえます。

また、雇用者数の増加に応じて税額控除を行っていた「雇用促進税制」は廃止され、その要素はオフィス減税の「上乗せ措置」として一本化されました。
今後は、拠点整備と雇用の双方を、オフィス減税の枠組みで評価する仕組みになります。

要件見直しと実務への影響

一方で、要件面では引き締めも行われています。
大企業については、対象となる取得価額要件が、現行の3,500万円以上から4,500万円以上へと引き上げられました。

また、整備計画の認定を受けた日から、対象建物等を事業の用に供した事業年度終了の日までの間に、事業主都合による離職者がいないことが新たな要件とされています。
雇用の「量」だけでなく「安定性」を重視する姿勢が明確になっています。

さらに、整備計画における雇用者増加数の算定では、集中地域以外の地域からの転勤者は対象外とされるなど、実質的な雇用創出を求める方向性が強まっています。

結論

令和8年度税制改正における地方拠点強化税制の見直しは、制度の使い勝手を高める一方で、形だけの拠点移転や雇用増加を抑制する内容となっています。
中古資産や改修が対象となったことで、地方の既存ストックを活用した現実的な拠点整備が可能になりました。

一方で、取得価額要件や離職者要件など、実務上は事前の計画設計と運用管理がより重要になります。
地方移転や本社機能の再編を検討する企業にとっては、税制優遇の有無だけでなく、事業戦略・人事戦略と一体で検討すべき局面に入ったといえるでしょう。

参考

・税のしるべ 2026年1月26日号
・令和8年度税制改正大綱(地方拠点強化税制関係)


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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