食品消費税ゼロで実質賃金は本当に上がるのか――一時的効果と持続性の壁を考える

政策

物価高が続く中、衆院選の公約として与野党がそろって消費税減税を掲げています。なかでも注目されているのが、食料品の消費税をゼロにする案です。民間エコノミストの試算では、食品消費税をゼロにすれば実質賃金は押し上げられるとされています。一方で、その効果は1年限りにとどまり、持続性には疑問符がつきます。
本稿では、食品消費税ゼロが実質賃金に与える影響を整理したうえで、減税政策の限界と課題を考えていきます。

食品消費税ゼロが実質賃金を押し上げる仕組み

実質賃金は、名目賃金から物価上昇率を差し引いて算出されます。つまり、賃金が変わらなくても物価が下がれば、実質賃金は上昇します。
軽減税率8%が適用されている食料品の消費税をゼロにした場合、消費者物価指数を大きく押し下げる効果が見込まれます。試算では、持ち家の家賃換算分を除いた消費者物価指数の上昇率を約2ポイント下押しする結果となっています。
この物価押し下げ効果により、実質賃金は統計上、明確に上昇することになります。

効果はなぜ1年限りなのか

しかし、この押し上げ効果は永続的ではありません。物価指数は前年同月比で比較されるため、減税から1年が経過すると、前年差としての物価下押し効果は消えてしまいます。
仮に減税を2年間に限定した場合、2年目には実質賃金の押し上げ効果は薄れ、3年目に税率を元に戻せば、逆に物価を押し上げ、実質賃金を押し下げる要因になります。
つまり、食品消費税ゼロは、実質賃金を恒常的に引き上げる政策ではなく、あくまで一時的な統計効果にとどまる点に注意が必要です。

現場で起こりうる減税効果の目減り

減税が必ずしも価格低下に直結するとは限りません。原材料費や人件費の上昇が続く中、事業者が減税分を価格転嫁せず、値上げの抑制にとどめるケースも想定されます。
その場合、家計が実感する負担軽減は限定的となり、想定された実質賃金の押し上げ効果も目減りします。特に外食や中食など、仕入税額控除との関係が複雑な業種では、価格形成が分かりにくくなる懸念もあります。

財源問題と市場の信認

消費税は、社会保障制度を支える基幹財源と位置づけられてきました。税率引き下げやゼロ化を行う場合、その代替財源をどこに求めるのかが避けて通れません。
財源の裏付けが不十分なまま減税が行われれば、財政規律の緩みへの懸念が高まり、為替や金融市場を通じて物価を押し上げるリスクもあります。そうなれば、実質賃金の改善どころか、逆効果となる可能性も否定できません。

結論

食品消費税ゼロは、物価を押し下げることで実質賃金を一時的に押し上げる効果があります。しかし、その効果は1年限りであり、持続的な賃金改善策とは言えません。
実質賃金を安定的に引き上げるためには、賃上げが継続する成長環境の整備や、生産性向上に資する政策が不可欠です。減税は即効性のある対策として一定の意味を持ちますが、それだけで家計の実感的な豊かさが回復するわけではないことを、冷静に見極める必要があります。

参考

日本経済新聞
・食品消費税ゼロなら… 実質賃金が上昇・効果は1年限り
・消費減税巡り「財源明確化を」 経団連会長


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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