分配に傾く衆院選 自維公約が示す「成長なき選択」の行方

政策

2月8日投開票の衆院選に向け、自民党と日本維新の会が公約を発表しました。最大の特徴は、両党がそろって食料品の消費税を2年間ゼロにする方針を掲げ、分配政策を前面に押し出した点にあります。
一方で、これまで成長戦略の柱とされてきた規制緩和や構造改革は後景に退きました。コメ政策やライドシェアといった象徴的テーマも、今回の選挙では争点になりにくい状況です。
本稿では、自維公約の変化が何を意味するのかを整理し、今回の衆院選が有権者にとってどのような選択になっているのかを考えます。

分配政策を軸に据えた自維公約

今回の自民・維新両党の公約は、分配政策を中心に据えた構成となりました。とりわけ象徴的なのが、食料品の消費税を2年間ゼロにする方針です。
消費税減税は家計への即効性が高く、有権者に分かりやすい政策です。物価高が続くなかで、生活者支援を重視する姿勢は一定の説得力を持ちます。
ただし、減税の具体的な財源や制度設計は示されていません。野党も含めた国民会議で検討するとしていますが、選挙前に踏み込まない姿勢は、争点化を避けたい思惑の表れとも言えます。

後退した構造改革と規制緩和

対照的に、成長戦略としての構造改革は存在感を弱めました。
自民党は、前回の参院選で掲げたコメの増産や生産調整見直しといった改革色の強い政策に触れていません。農業を成長産業に育てるという表現にとどまり、新規参入や競争促進の視点は薄れています。
維新も同様です。これまで看板政策としてきたライドシェアの全面解禁や規制改革は、重点項目から外され、個別政策の一部に位置付けられました。既得権と対峙する改革政党としての色合いは後退しています。
連立を前提とした政策調整の結果、改革よりも合意しやすい分配政策に軸足が移った構図が見て取れます。

成長戦略を投資に置き換える危うさ

自民党は、AIや半導体、安全保障分野などへの重点投資を成長戦略の柱に据えています。危機管理投資と成長投資を戦略的に行うという説明です。
しかし、投資の拡大だけで持続的な成長が実現するわけではありません。新規参入を促し、産業の新陳代謝を進める制度改革が伴わなければ、生産性の底上げにはつながりにくいからです。
潜在成長率が1%を下回る水準にある日本経済にとって、本来問われるべきは、どの分野で競争を促し、どの制度を変えるのかという点です。今回の選挙では、その議論が前面に出ていません。

多党化の中で薄れる政権選択

今回の衆院選は「政権選択選挙」と位置付けられていますが、実態は複雑です。
多党化が進み、与党と野党の二極構造は崩れています。自民・維新と、立憲民主党と公明党による新党の政策も、減税や安全保障など基本部分では大きな違いが見えにくくなっています。
どの政党を選んでも、主要政策の方向性が似通っていると、有権者は何を基準に選択すればよいのか分かりにくくなります。結果として、政策選択ではなく、人物評価に収れんするリスクも高まります。

分配か成長かという本来の論点

今回の選挙戦では、分配政策が前面に出る一方で、成長戦略は後回しになっています。
短期的な家計支援と、中長期的な成長戦略は本来両立が必要です。しかし、選挙では即効性のある政策が優先されがちです。
構造改革の議論を先送りすれば、将来の分配原資そのものが細る可能性があります。成長なき分配は持続しません。この点について、どの政党も十分に説明しているとは言い難い状況です。

結論

自民党と維新の公約は、分配を軸に据え、構造改革を後景に退かせた内容となりました。物価高の中で生活者支援を重視する姿勢は理解できますが、成長戦略の不在は中長期的な不安を残します。
また、多党化が進む中で、政権選択の意味も分かりにくくなっています。政策の違いが見えにくい選挙では、有権者は判断に迷います。
今回の衆院選は、分配か成長かという本質的な問いから目を背けたまま進んでいるようにも映ります。選挙後にこそ、持続的な成長と分配をどう両立させるのか、腰を据えた議論が求められます。

参考

・日本経済新聞「自維公約、分配軸に 規制緩和策は後退」
・日本経済新聞「自維、構造改革後回し」
・日本経済新聞「多党化、弱まる政権選択」


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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