10月4日に自民党総裁選が行われ、新しいリーダーが誕生します。衆参両院で少数与党に転落した自民党にとって、総裁=首相の自動的な就任は保証されません。野党との協議・連携を通じて初めて次期首相が決まるという政治状況は、日本政治にとって大きな転換点です。
では、次の首相にまず求められるのは何でしょうか。私は「短期化」する政治・政策形成に歯止めをかけ、中長期の課題に正面から取り組むことだと考えます。
短期化する政策決定の背景
近年、与野党を問わず選挙のたびに「給付金」や「減税」といった即効性のある政策が並びます。特に2020年のコロナ禍での一律10万円給付以降、この流れは加速しました。
当時は未曽有の危機に対処するために必要な政策でした。しかし、コロナが収束した後も「物価高対策」の名の下に、定額減税やエネルギー補助金などが繰り返され、すっかり「選挙前の常套手段」となっています。
確かに家計支援は重要ですが、支援対象を精緻に絞り込まずに一律配布する施策は、税収の有効活用という観点からも課題が多いのです。自治体への事務負担も増え続けています。
経済から外交まで広がる「短期志向」
短期志向は経済政策に限りません。外交・安全保障においても「目先の交渉成果」ばかりに注目し、長期的な国家戦略が語られない傾向が強まっています。
石破首相は辞任会見で「日米関税交渉の区切り」を挙げました。しかし、本来なら国際秩序の激変に対応する包括的な外交ビジョンこそ問われるはずです。実際、ここ数年の総裁選や選挙討論では、外交がまともに議題になることはほとんどありませんでした。
その間に日本は少子高齢化、財政悪化、エネルギー安全保障、人材投資の遅れといった課題を先送りにしてきました。
首相交代の「短期化」も大問題
政治の短期化は、首相の在任期間の短さにも現れています。
- 安倍晋三首相:7年8カ月
- 菅義偉首相:約1年
- 岸田文雄首相:約3年
- 石破茂首相:約1年
2020年以降、わずか6年で首相が4人も入れ替わる状況です。海外首脳から「日本の首相の名前を覚えられない」と揶揄された1990年代と同じ轍を踏むことは許されません。
国際情勢は今や、ウクライナ戦争や米中対立、トランプ前大統領の復権など、かつてない不確実性に包まれています。首相が次々と交代していては、日本の立場はますます弱くなるでしょう。
中長期課題にこそ集中を
短期的な給付や減税を繰り返すだけでは、根本的な課題は解決しません。次の首相が取り組むべきは、次のような「骨太の課題」です。
- 人口減少への本格対応
- 社会保障制度と財政の持続性確保
- 成長力の底上げと人材投資
- エネルギー安全保障と脱炭素戦略
- 外国人労働力の位置づけ
- 激変する国際秩序に対応する外交戦略
これらは数年単位で解決できるものではありません。しかし、今すぐに議論を始めなければ、後世に大きなツケを残すことになります。
おわりに──次期総裁選に望むこと
22日に告示される自民党総裁選は、日本が進むべき方向を議論する絶好の機会です。給付金や減税の競い合いではなく、中長期的な国家戦略をどう描くのか。候補者同士が真正面から議論し、有権者に選択肢を提示してほしいと思います。
少数与党時代に入った日本政治では、野党もまた責任ある政策形成を担わねばなりません。与野党が共に「短期的な人気取り」から脱却し、次世代に誇れる政治を築けるかどうか。新しい首相の手腕に、日本の未来がかかっています。
📌参考:日本経済新聞「次の首相に望むこと」(2025年9月15日付)
という事で、今回は以上とさせていただきます。
次回以降も、よろしくお願いします。

